モデル動物開発分野

夏目 里恵 技術専門職員


インタビュー

これまでのご経歴と、現在の職務内容についてお聞かせください。

 私が現在の研究サポート職に関わるようになったきっかけは、短大在学中に始めた脳研究所神経薬理学教室(後の分子神経生物学分野)での実験補助のアルバイトです。自分ができることは先生方のお手伝いに過ぎませんでしたが、その一部分が論文という形で成果として世界に発表されるということが、とても嬉しくやりがいを感じ、短大卒業後も非常勤の実験補助員として働き始めました。その時教授だった三品昌美先生が東京大学に移られ、その後、細胞神経生物学分野の﨑村建司教授のもとで、非常勤の実験補助員としてノックアウトマウス作製と行動解析実験のお手伝いを始め、この時習得したマウスを作製するための胚操作技術が評価され、CRESTの技術職員として研究に参加することができるようになりました。更にその後、新潟大学の技術職員として正式に採用され、技術専門職員として現在に至っています。

 私は、現在モデル動物開発分野の阿部学先生のもとで、遺伝子改変マウス、ラット等の作製に関わる胚操作とそれに必要な動物の維持管理を脳研究所特殊動物実験室で行うことが主な仕事です。さらに、遺伝子改変動物を先方の受け入れ体制に合わせて内外の研究者に送る事や、教室の事務的な仕事も行なっています。

技術職員として働くことを決めたきっかけと、脳研究所で勤務することになった経緯についてお聞かせください。

 初めは、実験器具の洗浄や部屋の掃除などが主な仕事でしたが、次第に先生方の実験の手伝いや論文用の図の作成など様々な業務を任されるようになりました。その時の神経薬理学教室は三品昌美教授(後に東京大学医学部薬理学教室教授)がグルタミン酸受容体の研究をされており、スタッフの先生方と大学院生の方々が昼夜(ほぼ24時間)実験をされていました。私自身も皆さんの実験のサポートをいろいろしていましたが、誰かの実験がうまくいってその成果がNatureやNeuronなどといった雑誌に論文として発表されると(その頃はそれがどのぐらいすごいことかは知りませんでしたが)、教室みんなでお祝いすることが楽しく、また、苦労した分が成果になって返ってくるということを知り、充実感と脳研究に対する面白さを感じるようになりました。その後、細胞神経生物学分野の﨑村建司教授のもとで、非常勤の実験補助員として始めたノックアウトマウス作製と行動解析実験に関わったことから私の世界が大きく変わりました。その当時、脳研究に適したB6という黒いマウスで遺伝子を改変した個体を作ることは難しいとされていましたが、﨑村先生が樹立したB6マウス由来ES細胞RENKA株を用いて胚操作でマウスを作製する方法を確立させました。この時の技術の取得が私の技術職員として働く大きな契機となりました。

脳研究所の研究環境の魅力は何でしょうか。

 私の場合、遺伝子改変マウス、ラットの作製と維持管理の裁量をある程度任されているので、特殊動物実験室でかなり自由に仕事をさせていただいています。

 過去の先生方が大きな投資をされて来たことと、現在も潤沢な研究費のもとで、実験施設や機器類が整備され最新の環境で仕事を進められる事です。

この仕事ならではの面白さややりがいはどんなところですか。また、どのような大変さがありますか。

 この仕事をしていて大変なことは、動物の相手をしているので、暦通りの休みが取れないことです。何人かのスタッフと共同して仕事をしていますが、時間外や休日の仕事はどうしても責任者として私がすることが多くなります。

 そんな大変なことも多いこの仕事ですが、私が続けてこられたのはこの仕事の面白さなのだと思います。自分が作製に携わった遺伝子欠損マウスの表現系から新しい事がわかることは、とても面白くやりがいを感じることです。

仕事をする上で心がけていることやモットーなどはありますか。

 意識して心がけていることはありませんが、仕事は楽しくするようにしています。日々同じことの繰り返しでもこつこつ続けることは大事だと思っています。大きな成果が得られることはほとんどないですが、日々の積み重ねで経験したことは、ちょっとした時に役に立つことがあります。

 仕事は生活の糧でもありますが、やはり生きている時間の大半を費やしているので楽しくこなせたらいいと思います。

終業後や休日はどのようにお過ごしでしょうか。趣味やリフレッシュ方法がありましたらご教示ください。

 特にないのですが、時間が取れれば旅行に行きたいと思います。

今後の目標についてお聞かせください。

 現在している実験はほとんど現象論の分野になります。目で見て分かるような結果が出て、ビジュアル的にすぐ判断できる面白さがあります。今後は、そこから一歩踏み込んで、この現象の背景に何があるのかということを考察できるよう知識を増やしていきたいと考えています。

脳研究所での勤務を検討している方、技術職員の仕事に興味がある方へのメッセージをお願いいたします。

 研究、実験というと難しそうに感じる方もいらっしゃると思いますが、何をしているところなんだろう、実験ってどんなことをするのかなどの興味があれば、挑戦できる仕事だと思います。理系大学出身ではない私でも、必要な知識や技術を習得し今日まで続けてくることができました。ちょっと覗いてみたいと思う方がいましたら、どんなバックグラウンドの方でもチャンスがあれば足を踏み入れてみてください。

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Interview・・・2025年2⽉時の所属とインタビュー内容を掲載しています
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