腫瘍病態学分野
岩倉 百合子 助教
インタビュー
日本学術振興会特別研究員、ニューヨーク大学スカボール研究所研究員を経て、現在に至る
現在,脳研究所でどのような研究を行っていますか?
脳神経系では、正常な神経伝達には「神経伝達物質」が、細胞の生存と発達には「神経栄養因子」が、それぞれ欠かすことができません。近年、これらは独立して作用するだけでなく、お互いが調節し合う「クロストーク(相互作用)」によって様々な作用を示すことがわかってきました。神経細胞の正常な発達において、あるいは統合失調症などの疾患において、こういった神経伝達物質と栄養因子のクロストークがどのような役割を果たしているのかを研究しています。
どうして研究者になろうと思ったのですか?
学生時に那波教授の講義を受講し、脳神経研究に初めて触れました。わずか1500gの人の脳の中に、あるいはたった一つの神経細胞の中に、まるで広大な宇宙が入っているように感じ、とてもワクワクしたことが始まりだったと思います。
研究者として働く上でのメリットや,研究者として働いていてよかったと思うことを教えてください。
研究職のメリット:裁量労働制と独立制に準ずる職業なので、やったこと・やらなかったことが全て自分に返ってきます。その反面、仕事量や時間の配分をフレキシブルに行える部分があるので、家庭や子供を持った時に働き方の調整をしやすいように思います。
研究者で良かったこと:脳細胞や脳機能の仕組みを解明しようとする基礎研究は、現在では様々な脳神経疾患・障害の解明や、治療法を確立するための基礎ともなっています。その点を常に意識して研究を続けたいと考えますし、研究結果がそのような形で社会へ還元される点にやりがいを感じています。また、研究や授業だけでなく、国内外の学会参加や留学、オープンラボでの中高校生への実習、大小様々な運営業務なども仕事の一部です。研究は狭い世界に閉じこもって行う部分もありますが、自分の想像以上に沢山の人々との繋がりがあり、多様な仕事ができることが面白いです。
プライベートとの両立をどのように行っていますか。工夫していることや心がけていることなどを教えてください。
日々綱渡りでなかなか両立できているとは言えず、家族や所属研究室の皆様のご理解とご好意に寄るところが大きいです。現在は、男女共同参画推進室より、ワークライフバランス支援員雇用制度の助成を受けており、精神的にも余裕を持つことができています。十分ではありませんが、仕事でも家庭でも事前の準備と計画をすること、出来ることには全力で取り組む・出来ないことには代替案を出すこと、は心掛けるようにしています。