
メンバー
池内 健
IKEUCHI Takeshi
宮下 哲典
MIYASHITA Akinori
原 範和
HARA Norikazu
菊地 正隆
KIKUCHI Masataka
研究概要
抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬であるレカネマブとドナネマブが実臨床に導入され、わが国の認知症医療は新たなステージを迎えた。臨床症候と形態画像に立脚した臨床診断を基盤に、脳内病変を反映するバイオマーカーを積極的に組み入れる診断プロセスを推進している。治療面では、原因分子に直接作用する疾患修飾薬が認知症に対する治療開発の中心となっている。このようなパラダイムシフトを先導すべく、当研究室では認知症医療のイノベーションを実現するための研究開発に取り組んでいる。私たちの研究室は、認知症コホート研究で収集した血液や脳脊髄液を用い、発症前から発症最早期に至る連続的な脳内病変の進展をバイオマーカーにより理解することを目指している。私たちは、脳脊髄液バイオマーカー検査が、認知症の臨床診断精度を向上させることを明らかにした。今後、認知症診断の主役の一つになると期待される血液バイオマーカーの開発に注力し、優れた技術を有する国内企業と臨床実装に向けた共同研究を展開している。さらに、認知症をゲノム情報に基づいて理解することが重要だと考え、国内最大規模の認知症ゲノムリソースを私たちは構築した。次世代シークエンサーを用いた全ゲノム/エクソーム解析を行い、日本人に特有な遺伝的リスクを見いだしている。多遺伝子(ポリジェニック)効果を日本人アルツハイマー病に適応し、先天的な認知症リスクを推定することに成功している。抗Aβ抗体薬の有害事象として生じるARIAを予測するためのAPOE検査の実装化を推進し、認知症に対するゲノム医療を実装化させたいと考えている。認知症研究を取り巻く環境は時代とともに変化していくが、次世代の認知症医療に貢献するというミッションを忘れずに、日々の研究を着実に進めていきたい。