新潟大学脳研究所の研究活動が更に進歩するために
優れた研究者を育成し続け、また診療に基づく研究成果が医療の発展につながるよう
活発な活動が行われています。

 本研究所の使命は、脳神経系統をめぐる研究活動にあります。しかし、本研究所の創立に至る背後には、教育と研究の場である医学部の中で、主として脳外科的疾患を中心とする診療を通じ、その中核が芽生えてきた長い歴史があります。したがって、研究活動と並んで診療活動と教育活動とが鼎を形成し一体となって進められているところに研究所の大きな特徴があります。他方、本研究所における研究活動の内容は「基礎神経科学」は勿論ですが、ヒトの脳疾患に関する「臨床神経科学」並びに2者を結ぶ「病態神経科学」が相互に一体となって研究活動を推進していることが大きな特色であり、これはまた本邦における脳研究の理想と考えられる姿でもあります。これらの研究活動が更にたゆみなく進められるために、優れた研究者を育成し続け、他方診療上の疑問点に出発した研究成果が医療の発展に取り入れられるよう以下のごとく活発な活動が行われています。

診療活動



 診療活動は、脳神経外科と脳神経内科の2診療科によって行われていますが、特徴的なことは、2診療科ともその外来診療はもちろん、病室、手術室、レントゲン室など、すべて診療活動が新潟大学医歯学総合病院内で行われていることです。このことは脳神経系が人体の最も重要な部分であるという当然の事実を診療面にあらわしているもので、これら2診療科は常に関連する医学部の臨床各科、たとえば精神科、外科、内科、眼科、耳鼻科、放射線科、小児科、整形外科などと緊密な連絡のもとで、受診者に適切な治療を行っています。

 脳神経外科は、毎週月・水曜日の午前中外来患者の診療を行っています。県内・県外の関連病院から脳腫瘍、脳血管障害、小児先天奇形など多数の症例が紹介されています。入院ベッドは現在30床で、手術は火・木・金と週3回、脳血管内手術は水、その他緊急手術は即時行い年間約400件の脳神経外科手術(脳血管内治療を含む)を行っています。今春より新しい手術用顕微鏡や脳血管撮影装置が導入されまして、最先端・高難度の手術を含めた治療に教室員一丸となって取り組んでいます。

 脳神経内科は月~水・金曜日の午前中外来診療を行っています。患者は県内のみならず県外からも紹介され、令和4年度には延11,740人の外来患者と延11,520人の入院患者を数えました。その患者の内訳は、認知症、脱髄、変性、代謝性、筋及び脳血管障害など多岐にわたります。

 こうした研究所内あるいは医学部内において行われている活動と並んで、脳神経外科は29の、脳神経内科は26の県内外の関連病院を有し、それらの地域で診療の中核的役割を果たしています。

 病理学分野では、本学脳神経外科はもとより全国の大学、病院から依頼される脳腫瘍、てんかん原性病変、脳血管障害例などを中心に年間約400例の生検例の病理組織学的検索を、また本学脳神経内科ならびに脳神経外科、それらの関連病院をはじめとし、さらに医学部病理学教室との共同検索例も含め、年間約40~50例の剖検例の検索を脳科学リソース研究部門と共に行っています。


教育活動




 優れた研究活動や治療の継承と発展は、常に優れた人材の育成にかかっています。本研究所は研究活動とともに、教育活動を積極的に推進しています。本研究所の各研究室は各専門領域ごとに新潟大学の学部学生の教育を担当しています。基礎分野は、先端医科学・脳神経科学・大学院の講義や研究実習を行い、次世代の育成に努めています。臨床2分野は臨床講義・ポリクリ・ベッドサイド教育を医学部にて行い、病理学分野は医学部と合同で臨床実習を行っています。加えて、各分野は医歯学総合研究科に所属し、医・理・工・薬・農・獣医・人文など多様な学部からの学生を国内外から受け入れ、修士・博士課程の大学院学生の教育や研究指導を行っています。

 本研究所の教育活動として最も古い歴史をもち、その中核をなすものに「新潟脳神経研究会」があります。これは中田瑞穂、平沢興先生らによってきわめて自由な話し合いの場として昭和13(1938)年9月28日、新潟大学医学部第2講堂において第1回の例会がもたれたことに始まります。定例の会はこれまで318回開催され、その間多くの歴史的な業績が語られ、後継者を育成しつつ今日に至っています。また、本研究所では、毎年全国の若手研究者を対象に神経学に関する教育を目的として「新潟神経学夏期セミナー」を開催してきました。特定のテーマのもと、所内外の専門研究者によるセミナー、及び見学・体験実習コースを通じて、各研究室で行われている研究を実践する機会も提供しておりました。新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で、令和2年の50回目の開催より「新潟神経学脳研セミナー」と名称を改め、直近の2回は所内の活発な交流を目的とした会を開催しています。

 他方、大学院学生、研究生を対象とする教育活動として各分野は、毎週定期的に研究討論会を開いています。病理学分野と脳科学リソース研究部門では、毎週1回組織診断検討会並びに臨床医と共にブレインカッティング(肉眼的脳検索)が催され、剖検から組織診断に至るまで一貫した教育が行われています。また「新潟脳神経臨床病理検討会(CPC)」では、病理学分野と脳科学リソース研究部門によって剖検検索されたほとんどの症例について、毎月2回臨床医と大学院学生を交え討論を行います。医学部や医歯学総合病院教員等はもとより、検索を依頼した県内外の病院医師も参加し、活発にその診断や治療、そして病因が検討されています。更に、臨床2分野は「新潟脳卒中研究会」「新潟画像医学研究会」「新潟脳神経外科懇話会」など、種々の臨床研究会を定期的に開催し、多数の学外医師の参加のもとで活発な討論を行なっています。

 こうした各分野を主体とする教育活動は、更に各分野の研究員の交流によって強化されています。本研究所分野間では、活発な交流教育が実施されています。更に医学部の内科、外科、精神科、耳鼻科、麻酔科、病理学や基礎分野の教室と盛んな交流があり、国内外の他大学とも年余にわたる教育を目的とした交流が行われています。

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