病理学分野

中原 亜紗 助教


インタビュー

これまでのご経歴と、現在の研究内容についてお聞かせください。

 信州大学医学部医学科を卒業後、初期研修開始と同時に信州大学大学院に入学し、神経病理学を学び始めました。初期研修修了と同時に新潟大学脳研究所病理学分野に転入し、引き続き神経病理を学び、特に変性疾患の病理について研究いたしました。卒後は、新潟市民病院の病理診断科で全身の病理の研修を行い、病理専門医、細胞診専門医を取得いたしました。脳研に戻ってからは研究を継続しながら分子病理専門医や神経病理認定医、電子顕微鏡二級技士の取得などをし、神経を専門とする病理医として学びを深めています。

 筋萎縮性硬化症や多系統萎縮症など、神経変性疾患を主な研究テーマとしていますが、それだけでなく、全身の病理を見ることができることを生かして研究を広げていきたいと思っています。

脳の研究に取り組むことを決めたきっかけと、脳研究所で研究されることになった経緯についてお聞かせください。

 中学生の頃、家族性の ALS の方と接する機会がありました。その本人・家族の苦しみが深く心に刻まれています。当時は医師になるつもりはなかったのですが、大学で医学を学ぶうちに自然と興味を惹かれました。信州大学に脳研究所病理学分野の OB である小栁清光先生が赴任され、標本の美しさ、面白さに魅了されて研究室に遊びに行くようになり、そのまま神経病理の道に進みました。その後も良き師に導かれ、ありがたいことに脳研究所で研究する機会をいただきました。

脳研究所で研究を行うメリット・研究環境の魅力は何でしょうか。

 やはり人だと思います。研究室の先輩や他教室の先生方から熱心で高度なご指導・サポートをいただける点です。卒後3年目に大学院生として入ったときは、他大学他県出身である私のことも温かく迎えてくださいました。とてもありがたかったです。

 脳研究所内の研究室同士でも非常に密な交流があり、良い関係で共同研究が行われています。病理学分野では 70 年代の症例もきちんと診断された状態で保管されています。先輩方が大切に積み上げてきた、かけがえのない大切な財産だと思っています。現在も県内の病院から解剖のご依頼を多くいただけており、臨床の先生方との連携が強固であることも強みと感じています。研究室の技師さんや事務の方が非常に優秀で温かく接してくださっており、いつも助けていただいています。

この仕事ならではの面白さややりがいはどんなところですか。また、どのような大変さがありますか。

 目の前の標本に疾患のほぼ全てがある、ということだと思います。そこからまだ十分な情報を引き出せていないだけで、新たなツールや考え方を導入することで疾患の病態に迫っていけると考えています。当研究室では 24 時間体制で解剖を行っています。解剖と予定していた発表や実験、学会準備が重なるときなどは時間のやりくりに追われることもあります。昨年末は解剖室で年越しをしました。大変というわけではないのですが、翌日のお正月は地震で目が覚めたので忘れられない年越しになりました。

仕事をする上で心がけていることやモットーなどはありますか。

 全ての検体が患者さんやご家族、臨床医の「疾患を解明したい」という熱意のもとに採取され、手元にあることを忘れないことです。目の前にある標本を先入観なしに観察することも重要だと思っています。「こうに違いない」「こう診断されている」という情報は時に判断を誤らせるので気を付けています。まずは病理医として正確な診断、更に臨床医の疑問点に応えるコメントができるよう心がけています。そういった中で得た気付きを研究に発展させるようにしています。

終業後や休日はどのようにお過ごしでしょうか。趣味やリフレッシュ方法がありましたらご教示ください。

 終業後は自宅で家事と翌日の準備をするともう寝る時間です。夫も病理医なので家でもずっと標本や切り出しなど仕事の話をしていることもあります。楽器演奏が趣味なので、時間を見つけては地元の室内合奏団や病理関係の音楽仲間とオーケストラで合奏を楽しんでいます。音楽を通じて新潟のお父さんお母さんのような存在ができて、精神的にも支えてもらっています。ありがたいことです。

今後の目標についてお聞かせください。新たに学んでみたいことや、挑戦してみたいことはありますか。

 疾患の病態を解明し、治療に結びつけていくことです。疾患の始まりに何が起こっているのかのヒントを病理標本上で捉えられるようにしたいと思います。将来的には色々な専門分野の研究者と共に患者さんに治療を届けられるような仕事に関わりたいと思っています。

 個人的な目標としては、出産を控えているので無事に出産し、保育園を確保し、早期に仕事に復帰することです。年齢的にもますます仕事を頑張りたい時期に重なってしまったので、妊娠出産による仕事の影響が最小になるような体制を模索していきたいです。

脳研究所で研究したいと考えている方、脳研への大学院進学を検討中の方へのメッセージをお願いいたします。

 脳研究所での研究生活はとても充実したものになると思います。脳研で色々なことに挑戦してみてほしいと思っています。

1⽇のスケジュール

Interview・・・2024年12⽉時の所属とインタビュー内容を掲載しています
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