システム脳病態学分野 上野研究室

宮下 聡 助教

インタビュー

宮下博士は早稲田大学大学院で博士号を取得後、国立精神神経センター神経研究所病態生化学研究部にてリサーチフェローとして研究に従事、2021年度より脳研究所システム脳病態学分野に着任し、バイオインフォマティクスを用いて神経発生や脳疾患の研究を進めています。

これまでの研究を教えてください。

私はこれまで、脳の後部に存在する小脳が、胎生期から生後にかけてどのように発生・発達していくかを研究してきました。小脳はとても優れたモデルですが、まだまだ分かっていないことが多く残されています。私のこれまでの研究で、小脳がとても効率良く細胞を産生する機構を持っていることが明らかになってきました。

脳研究所で研究することの魅力は何でしょうか。

脳研究所は、基礎・臨床研究がとても近い距離感で研究をしている点が、もっとも大きな魅力の一つだと思います。脳研究所に着任してまだ2年弱ですが、既に臨床の先生とのコラボレーションをさせていただいています。例えば脳神経外科の先生が着目されていた腫瘍関連遺伝子の発現を、バイオインフォマティクスの側面から解析し、腫瘍の分類との関連を見出すことができました(Natsumeda, 2022)。今後も臨床の先生とのコラボレーションをさせていただき、面白い研究を進めていきたいです。

現在取り組んでいる研究と今後の目標を教えてください。

現在は、これまで取り組んできた小脳の発生・発達の研究だけではなく、自分が培ってきたバイオインフォマティクスの知見も活かして臨床研究のビッグデータ解析も行っています。今後の医学・生物学はあらゆる技術を持つエキスパートが、協力して融合的な研究を展開していくことが必要とされています。私も脳研の中で自身の専門性を活かして研究を行っていきたいです。

Interview03.・・・2022年12月時の所属とインタビュー内容を掲載しています

脳疾患標本資源解析学分野

齋藤 理恵 助教

インタビュー

齋藤理恵先生は、新潟大学医学部医学科を卒業後、虎の門病院で研修医・神経内科医員として臨床医学の研鑽を積まれた後、新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子細胞医学に入学されました。大学院では脳研究所で神経病理学を専攻し、現在、脳研究所脳疾患標本資源解析学分野で神経病理医として活躍されています。

神経病理認定医/指導医、神経内科専門医/指導医、総合内科専門医、死体解剖資格をお持ちです。

脳研究所で研究することの魅力は何ですか?

脳研は、基礎と臨床の教室が協働して脳と神経疾患の研究を専門に行う国内唯一の研究所です。この恵まれた環境を活かし、基礎と臨床を融合した研究を展開できることが魅力です。また、高い専門性を有する幅広い研究者がいるので、一つの教室の枠にとらわれない多角的アプローチも可能です。私自身、従来の平面的病理解析に加え、基礎研究で開発された組織透明化技術をヒト剖検サンプルに用いることで、立体的な病理解析を展開できるようになりました。
その他にも脳研がある旭町キャンパスは、住宅地が混在する文教地区にあり、落ち着いた子育てしやすい環境です。これはワークライフバランスを実現させる上で、大事な要素だと思います。

現在取り組んでいる仕事や研究の面白さ、やりがいを教えて下さい。

神経病理学は、剖検や手術で得られた神経系の病理診断を行う医学分野です。また、貴重な剖検脳を適切に保管して明日の医学研究に役立てることも大事な業務です。このように神経系における臨床と基礎のハブ的機関にいるため、日々新しい発見や様々な領域の人との出会いがあり、魅力的な仕事だと思っています。現在、脳小血管病の病理学的研究に取り組んでいます。脳小血管の異常は様々な疾患に関わっているものの、病理標本から動的・立体的な脳微小血管の異常を捉えることは難しいとされてきました。難しい課題ではありますが、臨床の経験や脳研ならではの基礎の研究力で少しずつ新しい知見を得られるようになり、やりがいを感じています。

今後どのような研究をしていきたいですか?

研究に携わる医師として、最先端の病理学技術により得られた知見を元に、臨床へ還元できる研究に発展させていきたいです。脳小血管の変性は、病理学的に細動脈硬化という病理像に集約されて表現されてきましたが、解析の結果、その形態や病変の進展に何種類かあることが分かってきました。血管性認知症や脳梗塞後の運動障害に苦しむ患者さんが沢山いる中、脳小血管そのものにアプローチする根本的治療方法はまだありません。脳微小循環システムの構造的異常を解明し、病態解明と治療法開発へ役立てることを願っています。

細胞病態学分野

内ケ島 基政 准教授

インタビュー

内ヶ島博士は北海道大学大学院で博士号を取得後、北海道大学大学院助教、米国マサチューセッツ州立大学研究員を経て、現在は脳研究所細胞病態学分野でシナプス分子の分布に関する研究を進めています。

これまでの研究を教えて下さい。

私たちの脳内では様々な情報のやり取りがなされています。それを主に担っているのがシナプスです。シナプスは記憶や学習に伴ってその機能的を変化させることが知られる上、その異常は精神神経疾患の原因とも考えられていますので、シナプスの理解は神経科学において重要なテーマの1つです。私はこれまでに抗体を用いて分子の分布を可視化することで、シナプスがどのような分子によって構成されているのかを明らかにしてきました。

脳研究所で研究することの魅力は何でしょうか?

規模がちょうど良いことだと思います。脳研究所は脳神経科学をカバーする他の研究所に比べると小規模ですが、少数精鋭による先端的な研究が行われると同時に、他のラボに触れる機会も多いことから、融合型の研究を進めるのに良い土壌が整っていると思います。さらに研究を支える設備が優れているのはもちろんのことですが、優れた事務職員や技術職員の方々が家族のように私たちの研究をしっかりとサポートしてくださいます。

現在取り組んでいる研究と今後の目標を教えて下さい

「顕微鏡を使って世界中で今まで誰も見たことのないニューロンの姿を見ることに研究の面白さを感じています。特に、脳研が得意としている分子標識技術を用いることによって、シナプスの機能分子を生きた1つのニューロン丸ごとから観察することが可能になりつつあります。
究極的な研究目標は神経伝達の基本素子であるシナプスを構成する全ての分子の挙動を脳の活動下で観察かつ理解することです。これは現時点にて技術的にとても難しい目標ですが、脳研では多様な研究が行われておりますので、それらを応用して新たなブレイクスルーを生み出したいと考えています。

Interview01,Interview02・・・2021年1月時の所属とインタビュー内容を掲載しています

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