タウオパチーの疾患特異的なタウ線維構造を明らかにしました

2021年10月15日

概要

本研究所の田中 英智 特任助教、柿田 明美 教授(病理学分野)、池内 健 教授(遺伝子機能学分野)らは、英国MRC Laboratory of Molecular Biologyの Micheal Goedert 教授、Sjors Scheres 教授、東京都医学総合研究所の 長谷川 成人 プロジェクトリーダーらとの共同研究により、「構造に基づくタウオパチーの分類」の論文を2021年10月14日に発刊された英国科学雑誌「Nature」に発表しました。

研究成果のポイント

研究グループは、神経病理学的に診断された様々なタウオパチーの脳組織からタウ線維を調整し、進行性核上性麻痺(PSP)、球状グリア性タウオパチー(GGT)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)等のタウオパチーのタウ線維構造をクライオ電子顕微鏡により決定しました。タウオパチーの特徴は、これまで主に臨床診断と病理学的診断により明らかにされてきましたが、今回のクライオ電子顕微鏡による新知見は、タウ線維の構造に基づいたタウオパチー分類を可能にしました(図)。211014.ikeuchi_seika_pic.jpg

また今回の成果は、タウオパチー疾患間の類似性と相違性を研究するための新しい糸口をもたらしました。PSPと大脳皮質基底核変性症(CBD)は、臨床的に類似した4リピート型タウオパチーであり、両者には密接な関連があると考えられていました。しかし今回の研究により、PSPとCBDのタウの線維構造は、想像以上に異なっているが明らかになりました。PSPのタウ線維は3層の折り畳み構造を有し、GGTに類似していました。一方で4層構造を呈したAGDは、CBDのタウ線維に似ていることが明らかになりました。

今後の展開

タウ線維に基づいたこの新分類は、これまでの臨床診断や神経病理学的アプローチに新たな観点をもたらします。異なる線維構造は、同じタンパクからできているにもかかわらず、異なる疾患を引き起こします。これらの異なる線維構造が形成されるメカニズムは未解明であり、このメカニズムを解明することで、タウオパチーの診断や治療に新たな展開が開かれることが期待されます。

本研究は、本研究所をはじめとする日本ブレインバンクネットの研究者(東京都健康長寿医療センター 齋藤祐子部長、大阪大学 村山繁雄教授、愛知医科大学 吉田眞理教授)、マンチェスターブレインバンクの研究者(David Mann教授, Andrew Robinson教授)により神経病理診断されたタウオパチー剖検脳からタウ線維試料が調整され、生化学、電子顕微鏡、質量分析による翻訳後修飾などの解析を東京都医学総合研究所(長谷川成人プロジェクトリーダー、樽谷愛理客員研究員、亀谷富由樹研究員)において解析され、本邦の研究者がタウオパチーの構造解明に大きく貢献しました。

略語

PSP: progressive supranuclear palsy
GGT: globular glial tauopathy
AGD: argyrophilic grain dementia
CBD: corticobasal degeneration

掲載情報

【掲載誌】 Nature
【論文タイトル】 Structure-based classification of tauopathies
「構造に基づくタウオパチーの分類」
【doi】(公開論文はこちら▶) https://doi.org/10.1038/s41586-021-03911-7

関連リンク先

MRC Laboratory of Molecular Biology Webサイト
東京都医学総合研究所 Webサイト


研究分野

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