GPATCH4タンパクが核小体の機能維持と細胞生存に関与することを報告

2023年12月19日

概要

 核小体(注1)がリボソームの生成やリボソームRNAの転写だけでなく、細胞周期の調節や細胞の老化を含む多様な役割を果たしていることが知られています。GPATCH4(注2)は、核小体タンパク質の一つですが、その機能的な重要性はまだ明らかにされていませんでした。本研究では、GPATCH4の機能を解明するために、その機能不全が細胞の増殖、核小体構造の変化、アポトーシス(細胞死)(注3)、そして細胞の老化に与える影響を調べました。神経芽細胞腫細胞(SH-SY5Y細胞)を用いた実験の結果、GPATCH4の減少は細胞の増殖を抑制し、高濃度のエトポシドに曝された際にアポトーシスの感受性を高めました。核小体の形態比較では、核小体数が減少し、同時に個々の核小体が占める領域が大幅に拡大する傾向が観察されました。低濃度のエトポシドによる老化の誘導時、GPATCH4のノックダウンは細胞の生存率を減少させ、老化関連マーカーである老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-GAL)とp16の発現を増加させました。さらに、GPATCH4の機能不全はリボソーム系の遺伝子発現プロファイルに変化を引き起こしました。この研究結果は、GPATCH4が核小体の形態を調節し、細胞の生存率と関連している重要な核小体タンパク質であることを示しました。


図

図:GPATCH4のノックダウンによる核小体の変化

培養細胞 SH-SY5Yにおいて、RNA干渉によりGPATCH4をノックダウンした。ハイスループット細胞機能探索システム CellVoyagerCV8000を用いて核小体の形態的変化を評価したところ、GPATCH4のノックダウンにより、核小体の数が減り、一方で核小体個々のサイズが大きくなるという変化が観測された。(Hoechstで染色した核(青)、抗フィブリラリン抗体で標識した核小体(オレンジ))


本研究成果のポイント

  • GPATCH4の減少は細胞の増殖を抑制し、アポトーシスに対する感受性を高める。
  • GPATCH4の減少は核小体の形態に変化をもたらし、個々の核小体を拡大させる。
  • GPATCH4の機能不全は細胞の老化を促進し、老化関連マーカーの発現を増加させる。
  • GPATCH4の機能不全はリボソーム系の遺伝子発現プロファイルに変化を引き起こす。

今後の展開

 今後の研究では、GPATCH4のさらなる機能解析や、その他の細胞生物学的影響に焦点を当てることが期待されます。また、GPATCH4が持つ特定の分子メカニズムや細胞内での相互作用の解明が、細胞の基本的な機能や疾患の理解に貢献する可能性があります。


研究成果の公表

 本研究成果は2023年12月18日、学術雑誌 Biochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載されました。

論文タイトル

GPATCH4 contributes to nucleolus morphology and its dysfunction impairs cell viability

著者 Kazuki Kodera, Ryuichi Hishida, Akiko Sakai, Hiromi Nyuzuki, Noriko Matsui, Tomoyuki Yamanaka, Akihiko Saitoh, Hideaki Matsui
doi 10.1016/j.bbrc.2023.149384

 謝辞

本研究は、科研費基盤研究A(JP22484842)、科研費挑戦的研究(開拓)(JP23790744)、AMED-CREST(JP23gm1710010)、AMED-PRIME(JP19gm6110028)、武田科学振興財団、東京生化学研究会、上原記念生命科学財団、科学技術振興機構(JST)ムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2024)などの支援を受けて行われました。


用語解説

(注1)核小体:細胞核内に存在するRNAとタンパク質からなる構造体で、リボソームの生成などの機能を持つ。

(注2)GPATCH4:Gパッチドメイン含有タンパク質4で、核小体内で働くタンパク質の一つ。

(注3)アポトーシス:プログラムされた細胞死の一形態であり、通常は細胞が健康でない場合や特定のシグナルを受け取った場合に起こる。


研究分野

研究成果・実績
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