発達遅延や心臓の異常に関わる新規NONO変異を発見

2023年01月24日

概要

本研究所脳病態解析分野の 杉江淳准教授と、新田陽平特任助教は、横浜市立大学の 松本直通教授らとの共同研究により、non-pou domain-containing octamer-binding protein(NONO)遺伝子において同一のミスセンス変異(*1)を持つ3人の症例(発達の遅れや心臓の症状(心室頻拍や肥大型心筋症)など)を報告しました。3人とも男児であり、変異は無症状の母親から受け継がれました。ショウジョウバエを利用した実験により、発見されたNONOの変異は適切な核内局在を損なうことで軽度の機能喪失が引き起こされる可能性が示されました。

この成果は、2023118日にScientific Reports誌に発表されました。

Ⅰ.研究成果のポイント

  • 発達遅延や心臓の異常を持つ症例から、NONO遺伝子に変異があることを発見した。
  • ショウジョウバエを利用して、発見した変異が機能喪失型である可能性を示した。

手動定量とMeDUsAによる神経軸索数の自動定量の比較.jpg図:ショウジョウバエの複眼構造によるNONO遺伝子の機能評価

ショウジョウバエの複眼でNONO遺伝子の野生型(写真中央)または変異型(写真右)を発現させた。野生型では複眼構造に異常を呈し、変異型ではそれが和らいだ。このことから変異型は機能を喪失していることが示唆された。Itai et al., Sci. Rep. 2023から引用(一部改変)

Ⅱ.今後の展開

今回の発見により、発達の遅れを伴う男児の症例に対してゲノム解析を行う際に、NONOミスセンス変異を考慮する必要があることが示唆されます。

Ⅲ.研究成果の公表

 本研究成果は、20231月18日に、科学雑誌Scientific Reports誌に発表されました。

【論文タイトル】

A novel NONO variant that causes developmental delay and cardiac phenotypes

【著者】
Toshiyuki Itai, Atsushi Sugie, Yohei Nitta, Ryuto Maki, Takashi Suzuki, Yoichi Shinkai, Yoshihiro Watanabe, Yusuke Nakano, Kazushi Ichikawa, Nobuhiko Okamoto, Yasuhiro Utsuno, Eriko Koshimizu, Atsushi Fujita, Kohei Hamanaka, Yuri Uchiyama, Naomi Tsuchida, Noriko Miyake, Kazuharu Misawa, Takeshi Mizuguchi, Satoko Miyatake & Naomichi Matsumoto
【doi】 10.1038/s41598-023-27770-6

Ⅳ.用語解説

(*1)ミスセンス変異遺伝的変異の一種。一部のミスセンス変異はタンパク質の機能に影響を与えないこともあれば、機能の喪失や機能の獲得を引き起こし、疾患を引き起こすこともあります。すべてのミスセンス変異体が疾患を引き起こすわけではなく、そのような変異体の病原性を決定するためには今回のショウジョウバエを利用した実験のように機能的な特性評価が必要です。

研究分野

研究成果・実績
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