新たなARF3の遺伝子変異を発見

2021年08月27日

概要

ADP-ribosylation factor 3 (ARF3)で新たに見つかった遺伝子変異は、神経発達障害を引き起こすことが明らかになりました。
本研究所 脳病態解析分野の 杉江 淳 准教授 と、新田 陽平 特任助教 は、横浜市立大学の 松本 直通 教授 らとの共同研究により、ショウジョウバエを用いて遺伝子変異の毒性効果を実証しました。
ARF3は、低分子量Gタンパク質(※1)をコードする遺伝子です。この遺伝子はトランスゴルジ網(※2)でその機能を発揮します。本研究では、臨床的および遺伝学的評価によって、2つの新規遺伝子変異(Asp67ValとArg99Leu)が見つけられました。これらの変異について、実際に低分子量Gタンパク質としてトランスゴルジ網で適切に機能するかどうかが、ヒト培養細胞やショウジョウバエを用いて解析されました。さらにARF3タンパク質の構造解析結果を組み合わせ、Asp67Val変異は機能欠失、Arg99Leu変異は機能獲得型毒性を示す可能性が明らかにされました。
本研究成果は、英国の科学雑誌 Human Molecular Genetics (2021年8月4日付)に掲載されました。

本研究成果のポイント

・神経発達障害に関わるARF3変異を発見
・発見した2つの変異うち、1つは機能喪失型、もう一つは機能獲得型であることを特定

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用語解説

(※1)低分子量Gタンパク質(低分子量グアニンヌクレオチド結合タンパク質):
細胞内情報伝達のON/OFFを制御する重要なタンパク質。

(※2)トランスゴルジ網:
網目状の膜構造体で、小胞体からゴルジ体を経由して運ばれた積荷タンパク質を仕分けする。

論文情報

【掲載誌】 Human Molecular Genetics
【論文タイトル】 De novo ARF3 variants cause neurodevelopmental disorder with brain abnormality
【著者】

Masamune Sakamoto, Kazunori Sasaki, Atsushi Sugie, Yohei Nitta, Tetsuaki Kimura, Semra Gürsoy, Tayfun Cinleti, Mizue Iai, Toru Sengoku, Kazuhiro Ogata, Atsushi Suzuki, Nobuhiko Okamoto, Kazuhiro Iwama, Naomi Tsuchida, Yuri Uchiyama, Eriko Koshimizu, Atsushi Fujita, Kohei Hamanaka, Satoko Miyatake, Takeshi Mizuguchi, Masataka Taguri, Shuuichi Ito, Hidehisa Takahashi, Noriko Miyake and Naomichi Matsumoto

公開論文はこちら▶【doi】 10.1093/hmg/ddab224

研究分野

研究成果・実績
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