2024年09月18日
第54回新潟神経学 脳研セミナーが開催されました
2024年8月29日(木)から30日(金)の2日間にわたり、第54回新潟神経学脳研セミナーが開催されました。6年ぶりに、講演会と見学・体験コースを組み合わせたセミナー形式で実施され、多くの医学部生や大学院生、若手研究者にご参加いただきました。
初日には、最先端の脳研究に関する講演が行われました。伊藤浩介先生は「なぜヒトは音楽に感動するのか」というテーマで、ヒトを含む多様な動物種における音への反応を脳波計測により解析し、進化の視点から明らかにする研究について、将来研究を志す大学生や大学院生にも分かりやすく講演されました。また、三國貴康先生は、生きたマウスの頭蓋骨を透明化し、脳内の2光子ライブイメージングを可能にする新技術について講演し、現在注目を集めている脳の境界領域やグリンパティックシステムの理解に向けた今後の展望を紹介されました。さらに、松井秀彰先生は、神経変性疾患の理解には、進化の文脈から病気の原因を解明することが重要であり、それが新たな真の病態の理解につながるとの視点で講演され、これまでのパーキンソン病に加えてアルツハイマー型認知症の病態に関する最新の知見を共有してくださいました。
続いて、五十嵐博中先生から、長年にわたるMRIを用いた脳内の水動態の観察研究を総括する講演をしていただき、脳内の水動態のコントロールに深く関与するとされる水チャンネル「アクアポリン4」を標的とした阻害剤や、世界初の促進剤の開発についてご紹介いただきました。また、本学医学部の五十嵐道弘先生には、最先端の解析技術を駆使して神経成長の分子機構の理解に挑まれてきた研究者としての歩みを振り返っていただき、さらに、独自性の高い研究を続けるための秘訣についてもお話しいただきました。
最後に、特別ゲストとして理化学研究所の村山正宜先生にご登壇いただき、広視野2光子顕微鏡を用いた脳神経ネットワークのin vivoイメージングについて講演いただきました。脳内が星々が輝く宇宙のように見える美しい画像と共に、神経細胞間の繋がりを定量的に解析する手法が紹介されました。また、インド工科大学のSubramaniam Ganesh先生からは、思春期の若者に影響を与える致命的な神経疾患、ラフォラ病における不溶性グリコーゲンの蓄積とその分子メカニズムに関する最新の研究成果についてご講演いただきました。
2日目の午前には、脳研究所への進学を希望する大学生・大学院生向けに、研究所のPIメンバーによるリレートークを実施し、午後には7つの研究室における見学・体験コースが行われました。参加者からは、研究設備に触れられるだけでなく、研究者としての将来に関する話まで幅広く充実した内容だったとの感想をいただきました。
(文責:新潟脳神経研究会企画委員長 田井中 一貴)