ANXA11スプライス部位変異例の病理学的・分子生化学的解析の論文が発表されました

2021年06月29日

概要

本研究所 病理学分野と脳神経内科学分野の共同研究グループは,同分野の大学院生,齊ノ内 信 先生(病理学)と畠野 雄也 先生(脳神経内科学)を共同第一著者として,他田 真理 准教授(病理学),石原 智彦 講師(脳神経内科学)らとの共著,ALSの原因遺伝子の一つANXA11の機能解析の論文を発表しました。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は複数の原因遺伝子が知られ,それらの遺伝子機能や変異の特徴を調べることで,発症のメカニズム,ひいては治療法の開発に結び付くことが期待されます。本研究はALSで亡くなられた患者さんの遺伝子をエクソーム解析で網羅的に調べ,原因遺伝子のひとつANXA11に変異を見出しました。こうした遺伝子変異の研究の多くは, in silico※1解析や培養細胞を使用した実験で毒性解析を行っています。本研究ではそれに加えて,実際の患者さんの病理組織を用いた mRNA スプライシング※2解析や組織学的解析も行い,変異により神経細胞内に異常タンパク凝集が生じていることを示しました。病理学分野と脳神経内科学分野の共同研究による成果であり,研究組織内に複数の専門領域を有する新潟大学脳研究所らしさの詰まった症例報告となっています。

本論文は,Acta neuropathologica communications誌に掲載されました。210630.seika_pic.jpg

【用語解説】
(※1)In silico:
in vivo(生体内),in vitro (試験管内)に対応して、コンピューターを用いてシュミレーションで結果を予測する手法。

(※2)スプライシング:
蛋白質の生合成過程で,遺伝情報の一部(イントロン)が除去され,蛋白質合成に必要な部分(エクソン)が繋ぎ合わされる現象。

論文情報

【掲載誌】Acta neuropathologica communications
【論文タイトル】A novel splicing variant of ANXA11 in a patient with amyotrophic lateral sclerosis: histologic and biochemical features
【著者】Makoto Sainouchi, Yuya Hatano, Mari Tada, Tomohiko Ishihara, Shoichiro Ando, Taisuke Kato, Jun Tokunaga, Gaku Ito, Hiroaki Miyahara, Yasuko Toyoshima, Akio Yokoseki, Tetsutaro Ozawa, Kohei Akazawa, Osamu Onodera, Akiyoshi Kakita
【doi】10.1186/s40478-021-01202-w


研究分野

研究成果・実績
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