筋萎縮性側索硬化症の臨床的多様性に関わる新たな組織学的知見を報告しました
2016年12月01日
概要
筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis: ALS) は,上位および下位運動ニューロンが侵されることにより,進行性に筋力低下を来す致死的な神経変性疾患で,原因不明の難病とされてきました。しかし,2006年に主要原因タンパク質としてTAR DNA-binding protein of 43kDa (TDP-43) が同定されました。新潟大学脳研究所病理学分野の高橋均教授,柿田明美教授を中心とするグループは本疾患の研究に長年取り組んでおり,2008年には,TDP-43陽性封入体の脳内分布により,本疾患が運動ニューロン系に封入体が限局するType 1と,脳内に広く分布するType 2に分けられること,Type 2では高率に認知機能障害を伴うことを報告しました。 (Acta Neuropathol 116:169-82, 2008)
今回,病理学分野・神経内科学分野の竹内亮子医師,他田真理医師らは,Type 2の中に,神経細胞体内のみではなく神経突起末端にもリン酸化TDP-43 (pTDP-43) が顕著に蓄積している亜群があることを見出しました。また,こうした一群は,下位運動ニューロンの脱落が軽度であるにもかかわらず,生命予後が不良であるという臨床病理学的特徴を示し,神経細胞脱落に至る前に細胞機能障害が生じている可能性があることを報告しました。(Acta Neuropathol Commun 4(1):61, 2016, doi: 10.1186/s40478-016-0335-2)
■詳細はこちら(オンライン掲載 平成28年6月23日)
図1. pTDP-43陽性神経突起像
pTDP-43陽性点状構造は,synaptophysinの陽性像に近接して分布しているが共局在はしない(下段)。これらpTDP-43陽性像はSMI-32で標識される樹状突起に沿って認められる(上段)。よって,神経突起末端に存在すると考えられる。