内在性TDP-43 C末領域の部分欠損マウスを作成し、Q/Nリッチ領域がTDP-43の安定性に重要なことを発見しました。

2022年09月20日

概要

本研究所の動物資源開発研究分野 小田佳奈子博士(助教)、笹岡俊邦博士(教授)、横山峯介博士(前教授)、酒井清子修士(前職員)、脳神経内科学分野 小野寺理博士(所長・教授)、西澤正豊博士(名誉教授)は、北里大学医学部の佐藤俊哉博士(教授)との共同研究を実施し、動物個体での解析にて、TDP-43が蛋白として安定に発現・機能するための重要な領域を決定しました。

TAR DNA-binding protein 43 kDa(TDP-43)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に中心的な役割を持つ核蛋白で、ALSの残存運動神経内では過剰なリン酸化を受けて凝集します。この凝集性はTDP-43のC末領域に存在するプリオン様ドメイン(PLD)に起因し、さらにC末領域は遺伝性ALS変異が集中することから、特に注目されている領域です。C末領域は、そのアミノ酸配列特性から4つの領域(GaroS1HPQ/NGaroS2)に分けられますが、全ての領域を欠損させると、TDP-43が不安定になって分解され、マウスは胎生致死となります。そこで我々は、C末領域の部分欠損マウス12系統を作成して各領域の機能的意義を検討しました。その結果、GaroS2欠損TDP-43は蛋白として安定に発現し、マウスの発育にも大きな問題がなかったことから、TDP-43の基本的な機能の発現にはGaroS1からQ/Nリッチ領域が必須で、特にQ/Nリッチ領域の有無が重要であることを証明しました。

筆頭著者の佐藤俊哉博士は、動物資源開発研究分野の横山峯介 前教授の時代から、本分野の教員でお勤めくださり、2014年に北里大学にご異動後も、このプロジェクトを進め、長い期間にわたる仕事をまとめられました。

本研究成果は、2022年9月2日、Scientific Reports誌に掲載されました。

本研究成果のポイント

TDP-43の基本的な機能(蛋白の安定性・マウスの生存性)には、GaroS1からQ/Nリッチ領域までが必須であることを証明しました。(図)

GaroS2領域は非必須でしたが、TDP-43の量の自己調節機構に変化があったことから、自身の機能を調整している可能性が示唆されました。

多系統萎縮症患者と健常高齢者における α シヌクレイン蓄積画像の比較

論文情報

【掲載誌】 Scientific Reports
【論文タイトル】 Importance of the Q/N-rich segment for protein stability of endogenous mouse TDP-43
【著者】 Toshiya Sato, Kanako Oda, Seiko Sakai, Rika Kato, Saori Yamamori, Makoto Itakura, Yoshio Kodera, Masatoyo Nishizawa, Toshikuni Sasaoka, Osamu Onodera & Minesuke Yokoyama
公開論文はこちら▶【doi】 10.1038/s41598-022-19153-0

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研究成果・実績
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