論文紹介:抗菌薬と副腎皮質ステロイド薬の併用が有効であった神経ボレリア症の1例

2012年06月10日

概要

神経ボレリア症の症例報告が発表されました。高堂裕平先生に解説していただきました。

抗菌薬と副腎皮質ステロイド薬の併用が有効であった神経ボレリア症の1例. 臨床神経 52:411-415,2012

高堂 裕平, 下畑 享良, 河内 泉, 田中 惠子, 西澤 正豊 

ボレリア症は,スピロヘータの一種であるBorreliaがマダニを媒介として感染する細菌感染症であり,神経障害を呈するものは神経ボレリア症と呼ばれる.神経ボレリア症患者数は欧米で多いが,1980年代後半より本邦においても散見されている.多彩な中枢および末梢神経障害を呈し,その病態にインターフェロンγ(IFNγ)をはじめとする炎症性サイトカインが重要であると考えられている.
 症例は両側顔面筋麻痺,四肢の感覚障害と筋力低下にて発症し体幹のレベルを伴う感覚障害,膀胱直腸障害が加わり,緩徐進行性に増悪した66歳女性である.免疫グロブリン療法は無効,副腎皮質ステロイド薬により症状の進行は停止したが診断に苦慮した.髄液インターフェロンγの増加から感染症に伴うポリニューロパチーおよび脊髄炎を疑い,B. gariniiとB. afzeliiに対する血清ボレリア抗体IgG,IgM陽性により神経ボレリア症と診断した.抗菌薬と副腎皮質ステロイド薬の併用で症状は徐々に改善した.サイトカイン・ケモカインの増加のみられた場合には神経ボレリア症も考慮する必要があること,また本症に抗菌薬と副腎皮質ステロイド薬の併用が有効な場合があることが示唆された.

研究分野

研究成果・実績
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