論文紹介:高解像度T1強調 3D イメージにより描出される中大脳動脈解離

2013年11月04日

概要

 当科で経験した症例を上村昌寛先生が論文として発表されましたので、ご紹介します。

 症例は39歳の男性で、突発発症の右片麻痺と失語症で当科に入院されました。頭部CTでは左レンズ核の不明瞭化を認め、またCTAでは左中大脳動脈の水平部の閉塞を認めました。脳梗塞の診断でIV rt-PAを施行しております。フォローのCTAでは左中大脳動脈水平部は再開通し、double lumen signを認めたために中大脳動脈解離と診断しております。当研究所統合脳機能研究センターで3T-MRIを用いたfast spoiled gradient-echo imageでは拡張した解離腔が狭小化した真腔の後方に位置していることが分かるなど、解離部位の詳細を描出することができました。
 以前よりspoiled gradient echo法は詳細な血管形態を描出できることは知られておりましたが、3T-MRIを用いることで非侵襲的にまた短時間で血管形態を描出することが可能となりました。このために今後の急性期脳卒中診療ではますます3T-MRIが臨床現場で利用されることが考えられます。

 また脳動脈解離は若年性脳卒中の重要な原因の一つですが、診断が困難な疾患でもあります。本例のように初回に血管閉塞をしてしまった場合、解離なのか塞栓性閉塞なのかの区別が困難です。そのような症例に対してIV rt-PAを施行すべきかどうかについてはまだ十分に分かっていません。既報からは解離症例にIV rt-PAを施行した場合、明らかな出血性合併症の増加などは認められなかったことが報告されています。現時点では解離例に対するIV rt-PAは必ずしも禁忌と言えるものではないと思われます。但し、くも膜下出血の危険性はありますので、特に若年性脳卒中の場合には瘤形成などないか血管形態を十分に評価の上で投与すべきと考えます。

Uemura M, Akaiwa Y, Toriyabe M, et al. Spontaneous Middle Cerebral Artery Dissection Demonstrated by High-Resolution T1-Weighted 3D Image. Cerebrovasc Dis 2013;36:243-244.

http://www.karger.com/DOI/10.1159/000353873

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研究成果・実績
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