D1ドーパミン受容体を介する神経伝達は、嫌悪記憶の形成と、大脳皮質におけるArcの活性化に必須である

2020年09月23日

概要

新潟大学脳研究所動物資源開発研究分野の齊藤 奈英 社会人大学院生、笹岡 俊邦 教授は、システム脳病態学分野の田井中 一貴 教授、岐阜大学大学院の山口 瞬 教授、大阪大学蛋白研の疋田 貴俊 教授、Tom Macpherson助教との共同研究で、ドーパミン作動性神経伝達が、嫌悪記憶の形成と、大脳皮質のArc発現に影響を与えることを見出しました。

ドーパミン作動性神経伝達は、報酬学習だけでなく、嫌悪学習でも重要な役割を果たすと考えられています。ドーパミンD1受容体(D1Rs)の発現を可逆的に制御できる(D1RKD)マウスを用いて、嫌悪記憶形成に関する行動テストにより、D1Rを介したドーパミン作動性神経伝達の役割を検討しました。また、活動調節細胞骨格タンパク質(Arc)の発現を蛍光タンパク質(dVenus)で可視化できるマウス (Arc-dVenusトランスジェニックマウス) とD1RKDマウスの複合マウスで、嫌悪刺激となるフットショック電気刺激を行った後、全脳イメージングを行い、嫌悪記憶形成中の海馬と大脳皮質における、Arc発現制御によるdVenusの分布を調べました。 D1R発現の低下した状態では、対照マウスと比較して、嫌悪記憶形成の低下を示し、大脳皮質(視覚、体性感覚、および運動皮質)でのdVenus発現の低下が見られました。これらの結果は、D1Rを介したドーパミン作動性神経伝達が、特に大脳皮質におけるArc発現に影響を与えることにより、嫌悪記憶の形成に重要であることを示しています。

本研究成果は、日本神経科学学会の公式学術誌「Neuroscience Research」の新学術領域「オシロロジー」の2020年7月の特別号に発表されました。

■公開論文はこちら200925.ronbun_1.pic.jpg

研究分野

研究成果・実績
このページの先頭へ戻る