マーモセット卵巣のマウスへの移植と卵胞刺激ホルモン投与により移植卵巣の成熟に成功
2017年06月01日
概要
近年、マーモセットは脳研究の分野で大きく注目され、遺伝子改変動物が作出されていますが、まだ限られた研究機関以外での作出は困難な状況にあります。その一因として設備、経費面は勿論のこと、受精卵の確保が挙げられます。マーモセットでは、マウスのように一度に多数の受精卵を入手することが難しく、先行している研究機関では、大規模な飼育コロニーを持ち、必要な卵を確保して研究を進めています。私たちもマーモセットを用いたモデル動物の開発は脳研究推進に重要と考えていますが、マーモセットを大規模に飼育するためには多くの課題があり、それらの解決のための方法を検討しています。
そこで我々は他の研究機関、繁殖場等で実験終了や体調不良などで安楽死させる個体の卵巣に着目しました。これらの卵巣から受精卵を得ることができれば、小規模な研究に於いても受精卵を採取する有効な手段となり得ます。元々は廃棄される組織を貴重な遺伝資源として再利用することで、マーモセットの使用数の削減にも貢献できると共に、経費の削減という面でも有効と考えられます。
現在、我々は、共同研究機関や繁殖場の協力の下で安楽死個体からの卵巣を入手し、ヌードマウスに移植の後、ホルモン投与により成熟卵子を得ることに成功しました。
本成果は、平成28年度の生理学研究所-京都大学霊長類研究所-脳研究所合同シンポジウムにて発表しました。
(図1)本学の動物実験施設で飼育しているマーモセット。
(図2)マーモセット卵巣をnude mouseに移植し、卵胞刺激ホルモン投与により、マーモセットの成熟卵子が得られました。