iPS細胞を用いたセルGWASと患者コホートを用いたレアバリアント解析の融合研究によりアルツハイマー病の新たな創薬標的を同定しました

2022年02月18日

概要

当研究所、遺伝子機能解析学分野の 原 範和 特任助教、池内 健 教授 らは、京都大学iPS細胞研究所の 井上 治久 教授、近藤 孝之 特定拠点講師、理研バイオリソース研究センターiPS創薬基盤開発チームの 矢田 祐一郎 研究員 らとの共同研究によりアルツハイマー病の新たな治療標的の同定に関する論文を2022年2月18日(日本時間)に「Nature Aging」誌に発表しました。

研究成果

本研究ではアルツハイマー病患者102人から樹立したiPS細胞を神経細胞に分化させ、神経細胞が産生するアミロイドβ42/40比率と相関する24個の遺伝子座をゲノムワイド関連解析(GWAS)により同定しました。これら24個の遺伝子のうち8個の遺伝子は、ノックダウンによりアミロイドβ42/40比率が有意に変動したことから、アミロイドβ産生制御に関与する遺伝子である可能性が示唆されました。さらに、24個の遺伝子の全エクソーム解析データから、アルツハイマー病群で有意にレアバリアントの頻度が高い遺伝子としてKCNMA1を同定しました。本研究はiPS細胞を用いたセルGWASという新しい手法と、アルツハイマー病患者のレアバリアント解析を融合させることにより創出できた成果といえます。220218.seika_pic.jpg

今後の展開

今回の研究はiPS細胞から誘導した神経細胞を用いた解析を行いましたが、グリア細胞などに分化させ、アルツハイマー病に関連する細胞表現型を対象としたセルGWASを行うことにより、細胞種別のアルツハイマー病の病態解明につながることが期待されます。

掲載情報

【掲載誌】

Nature Aging

【論文タイトル】 Dissection of the polygenic architecture of neuronal Aβ production using a large sample of individual iPSC lines derived from Alzheimer's disease patients
[アルツハイマー病患者から樹立したiPS細胞由来の神経細胞におけるアミロイドβ産生に多遺伝子が関与する機構の解明]
【doi】 10.1038/s43587-021-00158-9

研究内容の詳細

iPSコホートと機械学習を用いたアルツハイマー病再構成 -CDiPテクノロジーによる無病社会に向けた孤発性高齢疾患の解読-

関連リンク

京都大学iPS細胞研究所ウェブサイト掲載記事


研究分野

研究成果・実績
このページの先頭へ戻る