家族性アルツハイマー病で生じるアミロイドβ産生の新たな機序を解明しました

2021年11月09日

概要

本研究所 遺伝子機能解析学分野の春日健作助教、池内 健教授らは、同志社大学の角田伸人博士,井原康夫博士らとの共同研究により「プレセニリン1遺伝子変異を伴う家族性アルツハイマー病におけるアミロイドβ43産生への遷移」に関する論文を2021年11月3日(日本時間)に科学雑誌「Translational Psychiatry」に発表しました。

研究の成果

研究グループは、プレセニリン1遺伝子変異を伴う家族性アルツハイマー病(家族性AD)におけるアミロイドβ(Aβ)産生メカニズムの解析を行い,プレセニリン1変異により特徴的なAβ43が産生されることを見いだしました。孤発性アルツハイマー病では,Aβ40産生経路とAβ42産生経路が知られていましたが,プレセニリン1変異では「VIVIT」というペプチドが産生されAβ43産生が亢進する新たな機序が存在することを明らかにしました。「VIVIT」の産生量は,家族性ADの発症年齢と有意に相関しており,臨床的重症度にも影響することを示しました。この発見により,ADを特徴付けるAβの産生機序の理解が進むものと期待されます。211109.ikeuchi_seika_pic.jpg

今後の展開

家族性ADは若年期に発症することが知られています。今回発見したAβ43の過剰産生が,家族性AD発症の早発化に関与していることが考えられます。Aβ43の過剰産生が家族性ADの病態の中核となっている可能性があり,家族性ADの診断や治療における新たな標的として臨床応用が進むことが期待されます。

本研究への支援

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「認知症研究開発事業」「脳科学研究戦略推進プログラム」による支援で実施されました。

掲載情報

【掲載誌】 Translational Psychiatry
【論文タイトル】 Switched Aβ43 generation in familial Alzheimer's disease with presenilin 1 mutation
プレセニリン1遺伝子変異を伴う家族性アルツハイマー病におけるアミロイドβ43産生への遷移
【doi】(公開論文はこちら▶) 10.1038/s41398-021-01684-1

研究内容の詳細

家族性アルツハイマー病患者の発症年齢別アミロイドβ産生量の差と仕組みを解明~新たな治療法開発と発症予防につながる可能性~

研究分野

研究成果・実績
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