前庭障害の回復に体性感覚野神経細胞の活性化が重要な働きをすることを解明

2022年10月07日

概要

前庭の一側性障害では、歩行や姿勢制御障害を生じますが、時間経過とともに徐々に回復します。そのメカニズムとして脳幹、小脳レベルで前庭入力の調整を行う前庭代償が知られています。近年はそれに加えて、障害された前庭系を、視覚および体性感覚系が機能的に置換する「感覚再重み付け」が報告されています。

そこで、本学医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 甲斐竜太 研究員、高橋邦行 准教授(現 宮崎大学医学部教授)、堀井新 教授は、本研究所 田井中一貴 教授(システム脳病態学分野)、岩倉百合子 助教(腫瘍病態学分野)、難波寿明 助教(分子神経生物学分野 現 和歌山県立医科大学講師)、那波宏之 教授(分子神経生物学分野 現 和歌山県立医科大学教授)、齊藤奈英(動物資源開発研究分野)、笹岡俊邦 教授(動物資源開発研究分野)および 岐阜大学医学部 山口瞬 教授 との共同研究において、一側性前庭障害後の感覚再重み付けの大脳皮質メカニズムについて調査し、Scientific Reports誌に報告しました。

本研究は、科学研究費補助金 (20K182245) の助成を受けて実施されました。

本研究論文のポイント

本研究では、アルサニル酸の鼓室内注入による化学的前庭破壊をマウスに施行しました。全てのマウスは、前庭機能障害を反映して、前庭破壊側への頭部傾斜角度の増加を示し、11日目には対照群との有意差なく回復しました。またバランスおよび運動障害を反映して、ロータロッド試験での落下時間が前庭破壊群で短縮し、4日目には対照群との有意差なく回復しました。
アルサニル酸の鼓室内注入よる一側前庭破壊を、最初期遺伝子 Arcの制御下に蛍光タンパク質dVenusを発現するArc-dVenusトランスジェニックマウスに行い、組織透明化処理と光シート顕微鏡を用いた3DイメージングであるCUBIC法で、活性化された大脳皮質領域の測定を行いました。その結果、前庭破壊後7日目の一次体性感覚野でArc発現細胞数が増加し、一次視覚野では対照群と有意差はありませんでした。本研究では透明化技術を用いた全脳3Dイメージングを用いることで、一側前庭破壊後の体性感覚系への感覚再重み付けが、前庭機能障害を補うメカニズムの一つであることを解明しました。

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今後の展開

本実験系を用いて、前庭破壊後の大脳皮質神経活動の長期経過、ならびに両側前庭破壊後の神経活動の変化を見ることができます。またヒトにおける前庭障害とその回復過程に関連する大脳皮質の活動をfMRIを用いて明らかにすることを計画しています。

論文情報

本研究成果は、2022年9月14日(日本時間)に「Scientific Reports」誌に掲載されました。

【掲載誌】 Scientific Reports
【論文タイトル】 Cerebrocortical activation following unilateral labyrinthectomy in mice characterized by whole-brain clearing: Implications for sensory reweighting
【著者】 Ryota Kai, Kuniyuki Takahashi, Kazuki Tainaka, Yuriko Iwakura, Hisaaki Namba, Nae Saito, Toshikuni Sasaoka, Shun Yamaguchi, Hiroyuki Nawa, and Arata Horii
公開論文はこちら▶【doi】 10.1038/s41598-022-19678-4.

研究分野

システム脳病態学分野 田井中研究室
腫瘍病態学分野
動物資源開発研究分野

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