論文紹介;MRIによる多系統萎縮症の新しいバイオマーカー
2011年03月23日
概要

多系統萎縮症(MSA)の病状進行の評価を目的とした3TーMRIによるバイオマーカーについての報告です.高堂裕平先生に解説していただきました.
多系統萎縮症(MSA)では病態の一つに,病状の進行とともに広がるグリオーシスが挙げられる.プロトン磁気共鳴スペクトロスコピー(1H-MRS)におけるMyo-inositol(MI)はグリオーシスを反映して増大する可能性が指摘されており,病状進行の評価に有用である可能性がある.本研究では,橋及び延髄におけるMIの,小脳型MSA (MSA-C) 患者における病状進行のバイオマーカーとしての有用性を検討するため,1H-MRSを用いて脳幹代謝物を測定し検討した.その結果,橋におけるMI/Cr比は,MSA-C群が健常対照群に比し有意に高値を示し.UMSARS(I+II+IVの合計)の値と正の相関を認めた.
本研究は,MSA-C患者の橋におけるMI/Cr比が,病状進行のバイオマーカーとして有用であることを示した最初の報告である.非侵襲的で簡便な手法である1H-MRSによって見出されたこの知見は,今後の臨床の場面に応用できる可能性がある.