論文紹介:ALSにおける首下がりの頻度とADLへの影響
2012年10月09日
概要
ALSおける首下がりについて,当科の上村昌寛先生,病理学教室の小阪崇幸先生らが検討し論文として報告いたしました.下畑享良先生に解説していただきました。
首下がり(dropped head syndrome)は首が前方に屈曲しているものの,胸・腰椎に異常な屈曲を認めない状態を指します.原因としては非炎症性の頸部伸筋ミオパチー,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー,多発筋炎,重症筋無力症,多系統萎縮症,ALS等が知られていますが,ALSについては有名ではあるもののインドからのケースシリーズ以外には症例報告が少数あるのみで,その臨床的特徴については十分には分かっていません.
今回,ALSにおいて首下がりを呈した症例の臨床像について後方視的な検討を行いました.これは首下がりを主徴としたALS患者さんを主治医として経験したことがきっかけでした.結論としては,首下がりの頻度は2.9%(3/105例)で,いずれの症例も下肢の筋力低下は保たれる傾向にあり,上肢筋力低下や球麻痺が顕著になった進行期においても歩行は可能でした.また首下がりの影響は2点あり,①頸部の不快感・痛みと②ADL制限,とくに食事や着衣が不自由であることで,頸部カラーの使用はこれらを軽減しました.剖検が2名で行われ,臨床表現型に対応する所見を認めました.首下がりを伴う3例のALSは臨床病理学的に類似しており,このような臨床バリアントが存在する可能性を指摘いたしました.
Uemura M, Kosaka T, Shimohata T, Ishikawa M, Nishihira Y, Toyoshima Y, Yanagawa K, Kawachi I, Takahashi H & Nishizawa M. Dropped head syndrome in amyotrophic lateral sclerosis. Amyotrophic Lateral Sclerosis 2012, early online.
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