共同研究論文発表:プルキンエ細胞の活動制御機構の一端を明らかに
2011年03月04日
概要
2011年3月2日発行のThe Journal of Neuroscienceへ、当分野との共同研究による研究成果を北海道大学大学院医学系研究科解剖学教室の山崎美和子助教、渡辺雅彦教授らが発表した(Yamasaki et al., JNS 31(9): 3362-3374)。この研究から、小脳プルキンエ細胞シナプスの活動性を制御するAMPA型グルタミン酸受容体のシナプスへの局在量を調節する分子機構の一端が明らかとなった。研究内容は、小脳シナプス可塑性、シナプス形成や運動機能に重要な役割を果たすδ2受容体が欠損したマウスにおいて、平行線維シナプスのAMPA受容体サブユニットのシナプス局在量が約5倍に増加しているという発見に基づくものである。小脳プルキンエ細胞へ主要な入力を送る2種類の線維である平行線維と登上線維が形成するシナプスでは、それぞれAMPA受容体の局在量が異なっているということが知られていたが、その差を形成する分子機序については不明であった。この研究から、δ2受容体はAMPA受容体の平行線維シナプスへの局在化に抑制的に作用することが示され、通常状態ではAMPA受容体量の多い登上線維シナプスとの間に分子レベルでシナプス活動性の格差を形成していることが示唆された。δ2受容体の今まで知られていなかった生理機能の存在を明らかした研究結果は、運動機能など、小脳の担う複雑な情報処理機構の全貌解明に極めて重要な知見であると考えられる。
研究分野
- 細胞神経生物学分野