2015年08月06日

イベント

第6回新潟大学脳研究所共同研究拠点国際シンポジウムを終えて

 7月25日~27日の3日間、国際シンポジウム「意識を必要とする脳機能の神経メカニズム」を開催しました。このシンポジウムを企画した最大の理由は、意識について議論・研究することが、日本では下手をするとタブー視されかねないという現状に強い危惧を感じたためです。筆者の専門分野である脳生理学を大きくはみ出したテーマですので、海外シンポジストの人選に当たっては意識研究の若手第一人者である金井良太先生(英国・サセックス大)に協力して頂き、海外からの講演者4名、国内からの講演者12名と、豪華な顔ぶれをそろえることができたと思います。
 当初の狙いは、主にマウスを用いた分子・細胞レベルの研究者、サルを用いた高次機能の研究者、ヒトを対象とする意識の研究者、理論研究者を交えて活発な意見交換をすることでした。しかしそれぞれの立ち位置は明確になったものの、各々の方法論の長短が上手く絡み合って一つの方向性が浮かび上がってくるには議論をもっと重ねる必要があると感じました。
 特に印象的だったのは、ニューロンの活動が、質的に全く異なる意識をどうやって生じるのかという問題(いわゆるハードプロブレム)に対する対処法です。一連の公理を基に導かれる統合情報理論で意識や脳機能を統一的に説明し、ハードプロブレムを無視できる形まで圧縮しようとする取り組みは、20世紀初頭の量子力学誕生前夜を思わせるものでした。このような動きが、筆者の専門である分子・細胞レベルの神経科学と結びつくとき、大きなブレークスルーが生まれると確信しました。
 結局シンポジウム開催期間の述べ参加人数は261人で、例年並みを確保できました。しかし本シンポジウムの講師のうち4名が7月30日に神戸国際会議場で行った日本神経科学大会のシンポジウムでは、360名収容の国際会議室に入りきれないくらい聴衆が集まったことを考えると、脳研究所のシンポジウムでももっと集客の努力をすべきであったと思います。いずれにしても、本シンポジウムをきっかけとして、意識に関心を持って下さる方が一人でも多く現れることを願っています。
(文責:システム脳生理学分野 澁木教授)

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