新潟脳神経研究会特別例会のご案内

日時 令和6年3月6日(水)17:00~18:00 詳細PDF
会場 脳研究所 統合脳機能研究センター 6階 中田記念ホール
(新潟市中央区旭町通1-757)
講演者 古本 祥三 先生
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
核薬学研究部 教授
東北大学大学院薬学研究科分子動態解析学分野 教授
内容

脳PETトレーサー開発研究の実際と将来展望

 多くの神経変性疾患では、特定のタンパク質がアミロイド線維の凝集体を形成し、経時的に蓄積する。これらの凝集体をPET によりin vivo で正確に可視化することができれば、⾼精度な早期診断、病態進行の評価、神経変性疾患の鑑別診断、治療効果の評価などの画像バイオマーカーとして活用できる。アルツハイマー病(AD)でいえばアミロイドβ(Aβ)とタウがそのようなタンパク質になる。我々の研究グループは、2004 年からAβ とタウのPET トレーサー開発研究に取り組んできた。Aβ トレーサーについては[11C]BF-227 や[18F]FACT の開発に成功したが、世界的には先行した米国の産学連合体によって開発された18F 標識トレーサーが上市され、普及している。一方で、タウトレーサーについては、2005 年、我々は世界に先駆けて[11C]BF-158 を開発し、報告した。そしてそれをリード化合物として、[18F]THK-523、[18F]THK-5105、[18F]THK-5117、[18F]THK-5351 などを開発した。しかし[18F]THK-5351 は、モノアミン酸化酵素B(MAO-B)にオフターゲット結合することが判明し、目的とするタウ特異的な画像化は実現できなかった。そこで発想を転換し、[18F]THK-5351 をリード化合物としてMAO-B をオンターゲットとするトレーサー研究を新たに展開し、最終的に[18F]SMBT-1 を開発するに至った。[18F]SMBT-1 は、脳内動態性に優れMAO-B に対して非常に高い結合選択性を示すことから、脳内MAO-B の分布を正確に画像化できる。反応性アストロサイトはMAO-B を高発現することから、SMBT-1-PET は神経変性疾患で見られるアストログリオーシスの画像バイオマーカーになると期待されている。一方、タウトレーサーについては、[18F]THK-5351 の構造改変を繰り返し、前臨床レベルでオフターゲット結合を⽰さないタウ⾼親和性の[18F]SNFT-1 を開発することに成功した。今後、臨床レベルでの有効性の検証を進める予定である。本講義では、脳PET トレーサー開発研究の実際として我々のタウトレーサー開発ストーリーを紹介し、その経験を踏まえたトレーサー開発の展望を概説する。

問合せ先

脳研究所事務室
TEL: 025-227-0388(内線0388), Email: seminar@bri.niigata-u.ac.jp

このページの先頭へ戻る