新潟脳神経研究会特別例会のご案内

日時 令和6年2月8日(木) 17:00~18:00 詳細PDF
会場 新潟医療人育成センター 4階 ホール
(新潟市中央区旭町通1-757)
講演者 山中 宏⼆ 先生
名古屋大学環境医学研究所・病態神経科学分野 教授
⼀般社団法人 日本神経科学学会 理事長
内容

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の
分子病理とその制御
−TDP-43, TBK1 を中心に−

 運動神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、RNA結合タンパク質であるTDP-43の病巣への蓄積が病理学的特徴として知られている。TDP-43は通常、核に優位に局在するが、ALSや前頭側頭葉変性症(FTLD)の病巣では、核から脱出して細胞質に異常局在し、タンパク質のリン酸化、切断、凝集がみられ、TDP-43病理(TDP-43pathology)と呼ばれている。最近、構造生物学的解析により、TDP-43-N末端領域がTDP-43単量体・多量体状態を制御することが注目されている。我々は、ALS死後脳やTDP-43単量体変異体の解析を通じて、ALSにおいてTDP-43の単量体化が、TDP-43病理形成の上流に位置する重要な分子イベントであることを見出した。一方、ALSの発症に関して多くのメカニズムが提唱されており、その⼀つとして小胞体・ミトコンドリア接触部(MAM)の異常が関与していることを我々は見出してきた。ALS原因遺伝子産物であるTBK1に着目して解析すると、ALS患者の脳・脊髄組織ではTBK1の活性化が顕著に低下していた。また、MAMを遺伝的に破綻させたマウスにおいてもTBK1活性低下が認められたことから、ALSにおけるMAMの破綻がTBK1の活性低下を惹起すると考えられる。さらに、MAMを破綻させたマウスではTBK1の活性低下に伴い、ストレス依存性に運動機能障害を呈した。したがって、MAMがTBK1の活性化を介して運動神経細胞のストレス応答に寄与しており、ALSではMAMの破綻に伴ってTBK1の活性が低下することが運動神経変性につながっていることが示唆される。これらの結果から、TBK1の活性維持や単量体TDP-43の除去がALSの新たな治療標的として期待される。
Reference: Oiwa et al. Science Advances (2023), Watanabe et al. PNAS (2023)
問合せ先

脳研究所事務室
TEL: 025-227-0388(内線0388), Email: seminar@bri.niigata-u.ac.jp

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