脳の病気は、なぜ生まれたのか。

病気に関わる分子は、本来、細胞の中で何をしているのか。老化は、どこから病気に変わるのか。病気の進化的な起源を問い、病態の根本理解を目指しながら、細胞から魚、マウス、ヒトの脳へと視点を広げます。進化学的手法と脳研究所のブレインバンク、そして20〜50年後のAIにはできない実験を組み合わせ、脳疾患と老化に挑みます。

次の発見を、あなたの研究に。

青色蛍光で可視化した神経細胞の顕微鏡像
顕微鏡像。神経細胞の蛍光観察。
クリーンベンチでの細胞培養作業
実験の様子。培養室のクリーンベンチでの作業。
脳病態解析分野のメンバー
研究室の集合写真。
小脳領域の神経活動記録。遊泳時の活動と回路の対応。
神経活動記録。小脳回路。

脳疾患というと非常に複雑でヒト特有のものと考えられるかもしれません。しかし様々な生き物が、自然の経過や老化の過程で、ヒトと似た脳の病気になります。私たちの研究室では、アフリカメダカが老化の過程でパーキンソン病によく似た病態を呈することを明らかにし、ヒトの脳疾患を調べる手がかりを得てきました。パーキンソン病に関わるαシヌクレインは魚類から登場する分子であり、アルツハイマー病に関わるアミロイド前駆タンパク質と相同なタンパク質は、魚や昆虫にも存在します。

ここから先を、一緒に考える。

神経変性

問い 脳疾患の原因となる分子は、細胞の中でどのような生理機能を担っているのか。

次に問いたいこと APP、APOE、αシヌクレイン(SNCA)などの分子は、細胞を守る仕組みにどう関わるのでしょうか。その働きの変化や破綻は、どのように病気につながるのでしょうか。

老化

問い 老いることと病むことの境目はどこにあるのか。

次に問いたいこと 老化を止めずに、病気だけを止めることはできるのか。そもそもなぜ老化するのか。

発達障害

問い 脳の発達や行動の特性は、遺伝子と環境によってどう変わるのか。

次に問いたいこと 脳は社会行動や感覚の処理にどう関わるのか。その理解を、一人ひとりの特性に合った環境や支援へ、どうつなげられるのか。

進化

問い 脳疾患や発達障害あるいは老化の進化的な起源は何か。

次に問いたいこと 病気にも関わる分子は、なぜ何億年も受け継がれてきたのか。私たちの脳がもつ多様性と、病気や障がいにつながる脆さは、進化の中でどのように生まれたのか。

研究について相談する

テーマは、研究室の基盤と本人の関心・強みを出発点に、議論しながら具体化します。最初の計画をなぞるだけでなく、得られた結果から問いを育て、自分の研究へ発展させることを重視します。

細胞質mtDNAとリソソーム、IFI16を示す解説図

細胞質のミトコンドリアDNAが神経変性を起こす

細胞質に漏れ出したミトコンドリアDNAが、炎症と細胞死を引き起こすことを、パーキンソン病モデルで示しました。

このDNAの蓄積を抑えると、モデル魚の運動障害と神経変性が改善しました。

Matsui et al., Nat. Commun., 2021 · プレスリリース

脳研プレスリリース図。馴染みのある環境と忌避環境での社会性、網膜からの情報処理。

同じ遺伝子変異でも、環境で社会行動が変わる

ube3a変異ゼブラフィッシュから

ube3a変異ゼブラフィッシュでは、不安を誘発する環境で仲間に近づく行動が減り、慣れ親しんだ環境では改善しました。

ASD様の社会性変化が魚にもあり、感覚と環境で修飾される。

Dougnon and Matsui, Mol. Psychiatry, 2025 · プレスリリース

若手の研究と、その先

若手教員の研究|2022年に助教として着任、2026年に准教授

環境と社会行動、そしてAPPの本来の働きを探る

何を問うたか 環境は社会性をどう変えるのか。APPは本来、神経細胞で何をしているのか。

担った仕事 ube3a変異ゼブラフィッシュで、社会性が環境によって変わることを示しました。APPが核由来廃棄物を排出して細胞を守ることを示した研究室の論文でも、筆頭著者を務めました。

その後 2026年9月、准教授に昇進しました。

筆頭著者論文:Mol. Psychiatry 2025 · PNAS 2026

Godfried Dougnon

大学院生(博士課程)の研究

自ら組み立てた研究を博士論文に。その先は米国での研究へ。

何を問うたか 細胞内の輸送と品質管理は、神経変性にどう関わるのか。

担った仕事 最初のプロジェクトがうまく進まなかったため、自分で別のプロジェクトを考えました。OptineurinがTBK1によってリン酸化されるとゴルジ体の断片化が進むことを示し、博士論文にまとめました。

その後 2026年9月に博士課程を修了し、米国ジョンズ・ホプキンス大学(Dr. Sawa)でポスドクを始めます。

筆頭著者論文:Biochem. Biophys. Res. Commun. 2025

Md. Nazmul Islam · ニュース

臨床医の博士論文

  • 古寺 一樹 小児科医。GPATCH4が核小体の形態維持に関わり、その機能不全が細胞の生存を損なうことを示しました。 筆頭著者論文:Biochem. Biophys. Res. Commun. 2024
  • 入月 浩美 小児科医。Atp13a2欠損ゼブラフィッシュで、ドーパミン神経の変性と細胞内輸送の障害を示しました。現在は新潟大学ゲノム医療部遺伝医療センター助教。 筆頭著者論文:IBRO Rep. 2020

ここで研究する

研究経験や完成した研究計画は必須ではありません。求めるのは、教わった手順の目的を理解し、結果を吟味し、次に何を調べるべきかを自ら考える力です。研究室見学も歓迎します。

さまざまな分野から集まっています。メンバーと最近の修了者の出身分野(24人)。学部学生は在籍分野。
  • 理学(生物学・物理学など)9
  • 医学9
  • 薬学2
  • 獣医学2
  • 歯学1
  • 保健・医療技術1

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研究領域

青色蛍光で可視化した神経細胞の顕微鏡像

神経変性

核由来廃棄物とmtDNA漏出。APP、αシヌクレイン、リソソーム。アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSを含む神経難病を研究しています。

系統樹にもとづくイラストと、アフリカメダカ(ターコイズキリフィッシュ)

老化・進化

アフリカメダカの加齢関連疾患を調べています。αシヌクレインやAPPの本来の働きを、進化の視点から問い直します。

脳研プレスリリース図。馴染みのある環境と忌避環境での社会性、網膜からの情報処理。

発達障害

自閉症やADHDに関わる脳の働きを、小脳の神経回路と、遺伝子・環境による行動の変化から調べています。

三つの領域をつなぐ考え方は研究概要へ

研究室の核

難病を克服する

脳疾患の本質を明らかにし、克服すべき脳疾患に対する研究成果は産学連携・創薬研究・予防医学などに発展させ、治療と人々の健康長寿に貢献する。

障がいを支え合う

病気の予防・治療を目指すとともに、障がいや老いがあっても、一人ひとりがその人らしく生きられる社会を考えます。

科学の歴史を刻む

アイデアを研究に育て、論文として世に出す。不治の病を解決する。教科書を書き換える。

人と研究環境

メンバー全員を見る · 研究設備

その他の最近の論文

  1. Ayman, U., Otsuka, T., Dougnon, G., Matsui, H.* Crosstalk between ApoE-expressing cells and genotoxic stress in the mouse brain Brain Res. , 2026 doi:10.1016/j.brainres.2025.150080
  2. Otsuka, T.*, Matsui, H.* Loss of tissue-state plasticity: a conceptual framework for age-associated regenerative failure Inflamm. Regener. , 2026 doi:10.1186/s41232-026-00435-3
  3. Hishida, R., Otsuka, T., Toyokuni, S., Matsui, H.* Structural and metabolic signatures of cardiac aging in African turquoise killifish (Nothobranchius furzeri) Histol. Histopathol. , 2026 doi:10.14670/HH-25-143

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