研究理念

はじめに

私たちの研究室は

- 難病を克服する -
- 障害を支え合う -
- 科学の歴史を刻む -

ことを目指しています。

1. ヒトは多種多様であることを遠い昔に選んだ生物の子孫です

ヒトは受精卵から様々な発生過程を経て成長していきます。元来生物は細胞分裂で増えることで親と子は同じ遺伝子を持つものでした。しかし、ヒトの遠い祖先にあたる生物は両親からそれぞれ遺伝子を受け継ぎ、さらに様々な遺伝子の変化を許容することにより、子が両親や兄弟とは異なる遺伝子をもつという選択肢をとりました。そのためヒトは様々で個々に違うことが当然であり、それが種全体としては、環境の変化に強い、力を合わせることできる、などのとても魅力的な形質につながっています。

2. 老化と加齢関連疾患

この形質のためにヒトには-世代を超えてつながる生殖細胞-と-それを守る体細胞-があります。ヒトが若い世代を育みながら老いる様に、体細胞は生殖細胞を守る長い年月の間にDNA等に障害を蓄積していきます。加齢とともに核の中の傷ついたDNAは、核膜から漏れ細胞質に出てしまいます。そのことが様々な老化関連の現象を惹起することがわかっています。

病気の中には、認知症や運動障害のように老化と強い関係があり、予防や治療を必要としているものがあります。これら加齢関連疾患は完全には老化とイコールではありません。年をとって筋萎縮などがあっても認知機能のしっかりした方がいるように、老化と各種の加齢関連疾患は分離可能なものであるはずです。

私達は老化や様々な加齢関連疾患に共通する細胞内のイベント、一方でそれぞれの加齢関連疾患に固有の誘引、それらを同定する研究を行っています。そしてパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、心不全、サルコペニア、肝不全などの難病の病態を解明しようとしています。

3. 発生と発達障害

ヒトは様々で個々に違うことがかえがたい魅力である一方で、多種多様であること、遺伝子の変化が起こりやすいことなどから、ある時代・ある環境では生きることによりチャレンジを要するヒトもたくさんいます。

小型魚類は発生過程の観察が容易であり、発生過程に起きる発達障害の研究に適しています。中でも特に神経精神に関連した発達障害に焦点を当て、その新しいメカニズムを見出すことで、障害の理解につなげます。