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2017年08月22日

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第47回夏期セミナーを終えて

1日目

7月27日(木)~7月29日(土)の3日間にわたり,第47回新潟神経学夏期セミナーが開催されました。1日目となる7月27日(木)の見学・体験実習コースでは,「脳活動の光学的イメージング(7/27)」に6名,「遺伝子改変動物作製の実際(7/26-27)」に5名,「神経細胞の培養と遺伝子導入(7/27)」に5名,「脳研レジデント(臨床)体験コース(7/27)」に5名の参加がありました。

参加者は主に全国から集まった医学部生や大学院生,若手研究者です。基礎神経科学の研究を見学・体験したり,臨床の現場見学や神経病理実習を行いました。

第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真

2日目

夏期セミナー2日目の7月28日(金)は「脳コネクトームの最先端」というタイトルで、モデル動物であるマウスやショウジョウバエのコネクトームにおける最新の脳研究に関する基礎系セッションを開催しました。世界の脳研究の潮流であるモデル動物の神経回路地図の作成に向けた先端の解析技術や情報解析技術に関する知見が得られるとともに、神経回路地図から得られる高次脳機能の理解、および難治性神経疾患の克服に向けた今後の展望を学ぶことができました。

午前中のセッションではシステム脳病態学の小職と上野 将紀先生より発表させて頂きました。

小職の方からは、「組織透明化技術と脳コネクトーム」というタイトルで、組織透明化技術を用いた3Dイメージングに関する研究を発表させて頂きました。マウス脳において神経線維の一つ一つを全脳レベルで包括的に解析することは未だ実現しておりませんが、マウス全脳のコネクトーム解析に向けて必要な技術課題、特に組織透明化手法とハイスループットに観察可能な光学系、並びに情報解析技術の概要について紹介させて頂きました。

上野先生からは、「障害によるコネクトームの再編」というタイトルで、脳や脊髄の障害後に可塑的・代償的に変化する神経回路の解析に関する研究を発表して頂きました。運動回路や自律神経、免疫制御の神経回路を中心に、回路の再編および再生が期待される最新の研究成果や背景となる神経回路再編のメカニズムについてご紹介頂き、将来的な治療の可能性を感じさせて頂きました。

午後のセッションでは東大分生研の伊藤 啓先生、テキサス大学の小川 幸恵先生、並びに特別講演として脳研崎村 建司先生よりご発表頂きました。

伊藤先生には、「ショウジョウバエのコネクトーム」というタイトルで、ショウジョウバエ脳の全脳コネクトーム解析に関する研究を発表して頂きました。特定の神経の機能を解析するために必要な細胞特異的な遺伝子発現誘導系に関する機能解析手法に加えて、光顕と電顕で得られた3Dデータを統合するデータベースの構築など、国際レベルで展開されているコネクトーム解析に関してご紹介頂き、デファクトスタンダード構築に向けた機運を感じさせて頂きました。

小川先生には、「ドーパミン/セロトニン神経のコネクトーム」というタイトルで、マウス脳におけるrabies virusシステムを用いたドーパミン/セロトニン神経の網羅的解析に関する研究を発表して頂きました。ドーパミン神経のVTAへの入力とセロトニン神経のDRへの入力が高い相同性を示すことや、新規に同定されたこれらの神経による制御ネットワークに関する最新の知見に関してご紹介頂き、神経ネットワークの網羅的解析により教科書が書き換わるような発見がもたらされる可能性を感じました。

崎村先生には、「遺伝子改変動物による脳機能解析」というタイトルで、崎村先生が遺伝子改変動物の作製に携われた経緯とともに遺伝子改変動物が脳科学分野に与えたインパクトについてご発表頂きました。とりわけ、広く使われる一般的な技術基盤の確立に注力された結果、世界中の研究者に多種多様な遺伝子改変動物をご提供されるに至り、世界の脳研究を力強く牽引されてきたこれまでの歩みをご紹介頂きました。最後には、若手研究者に向けての応援メッセージを頂き、研究に対する姿勢や取り組み方を学ばせて頂きました。

(文責:システム脳病態学分野 田井中 一貴)

第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真
第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真 第47回夏期セミナー写真
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3日目

夏期セミナー最終日の午前中は,"神経疾患の遺伝子治療"のテーマで国内の大変ご高名な先生方から遺伝子治療の基礎病態とその応用のお話を頂きました.午後には特別講演で,Cincinnati大のPI佐々木敦朗先生からご講演でした.各セッションの報告などを,以下に記します.

今回,"神経疾患の遺伝子治療"と題したシンポジウムを企画いたしました.最終日にもかかわらず,朝から多くの聴衆にご参加いただき,この領域に関する興味の高さを感じました.実際,臨床応用が極めて近いこと,治療の劇的な効果などを知ることができ,さらに近い将来のさまざまな疾患も含めた適応の可能性を伺え,今後の医学への貢献の可能性を知ることができ,私も含めて(?)若い研究者の動議付けとなるセッションでした.いずれの先生方の研究に対する熱意,その背景にある治療応用への思いは,聴衆の皆さんに動機付けられるものであったと思いました.

演題1 ALS病態モデルとその応用展開
新潟大学脳研究所神経内科 須貝 章弘 先生
筋萎縮性側策硬化症(ALS)の病態に直接関与する核蛋白TDP-43のmRNAレベルでの調節のお話であった.ALSでは,TDP-43の異常を認めることが多い.TDP-43はスプライシング制御による自身の量調節機構(autoregulation)があり,ALSではこのautoregulation機能の破綻が生じ,病態に関与されることが推定される.孤発性ALSは疾患モデルを作ることが難しいが,今回アンチセンスオリゴを用いて,この機序に基づいたALS病態モデルを作成し,分子標的治療に向けた検討をしているとのことであった.ALSは疾患モデルを作ることも難しいが,新しいモデルを用いて,病態や治療の検討が期待される.

演題2 神経筋疾患に対する核酸医薬開発
国立精神・神経医療研究センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部 青木 吉嗣 先生
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対するアンチセンス核酸を用いたexon skip療法のファースト・イン・ヒューマン試験も成功されている.さらに,骨格筋指向性のあるモルフォリノ核酸伝達技術を開発し治験を進めている.その一方,今年,ALSのC9orf72 hexanucleotide repeat expansionにおいて,transgolgi networkの障害,細胞内・外小胞輸送の障害が病態の主体となることを示された.また,異常伸長付近のイントロンに対するアンチセンス療法で,細胞内・細胞外小胞輸送異常が正常化するということであった.
DMD,ALS,それ以外にもさまざまな疾患に対してアンチセンスオリゴによる応用を目指されているとのことであった.広い視点からさまざまな神経疾患に取り組まれている点に強くインスパイアされた.

演題3 「福山型」筋ジスの新知見とアンチセンス治療
神戸大学大学院医学研究科神経内科/分子脳科学 
東京大大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学 戸田 達史 教授
本邦の小児期筋ジストロフィーでDMDについで多い福山型筋ジストロフィー(FCMD)のアンチセンス治療のお話から始まった.DMDとは異なり,FCMDはほとんど同じ変異なので,治療のターゲットは,1種類で可能であること,以前は3種類のアンチセンスのカクテル療法が必要であったが,現在は1種類で可能となっていることのお話しであった.また,FCMD原因遺伝子フクチン遺伝子の機能に関しては,これまで明らかになっていなかったが,α-ジストログリカンに結合する糖鎖(リビトールリン酸)をフクチンが結合させることで,生理的な機能を果たすことを昨年ご報告された.疾患の基礎病態解明から治療応用に結び付けられている点は見習うべきだと思った.

演題4 エピゲノム創薬で治療できる可能性のある神経疾患などの難病について
京都大学大学院医学研究科形態形成機構学 萩原 正敏教授
mRNAから全身に対する治療を目指した研究を行われている.選択的splicingを制御する低分子化合物を広くスクリーニングされている.低分子化合物は,薬剤のバリアーの血液脳関門を越えられるので,非常に魅力的である.cystic fibrosis,心Fabry,papillomaから,ダウン症まで,その候補は200を超えていた.また,その技術を応用するため,ご自身でもベンチャー企業を作られ,アカデミアからいかに創薬に進むかもご教授いただいた.

演題5 AAVベクターによる遺伝子治療
自治医科大学内科学講座神経内科分野
東京大学医科学研究所遺伝子・細胞治療センター 村松 慎一特命教授
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをいろいろ開発され,当初パーキンソン病の治療から始められ,AADC欠損症の小児への治療でも劇的な映像を示された.また,最近ではALSや脊髄小脳変性症(SCA1,6)への応用のデータも示された.パーキンソン病患者さんのの運動機能改善,完全寝たきりだったAADC欠損症の小児が立てるようになった映像も驚きであったが,一度遺伝子治療を行ったのち,動物では,15年,人でも5年は効果が持続しているデータは治療の永続性で注目すべきである.

(文責:オーガナイザー 神経内科学分野 金澤 雅人)

特別講演 脳疾患におけるGTP代謝リプログラムと新たな治療戦略:
サイエンスのメジャーリーグで勝負する為に大事な3つのこと
Cincinnati大 佐々木 敦朗先生
佐々木先生は,大学院卒業後,渡米され,現在はCincinnatiでPIとしてご活躍中である.今回のご講演は,glioblastoma cell lineにおけるGTP代謝亢進,GTPのセンサーとしてのPI5P4kβと発見のお話であった.またKRP203/ fingolimodがPI5P4kβに作用して,腫瘍の細胞死に関与する系を示された.これまで代謝におけるATPは古くから検討されていたが,新しいGTP系は注目すべきである.
また,海外でも科学者として成功するためには,科学者としての基礎体力,独自の魔球(本人しか持ち得ない能力),仲間と酒(コミュニケーション)の3つが大事であること,情報,自信,勇気を持つことも強調されていた.

3日目のセッションは,土曜日の朝から多くのご参加をいただきました.非常に有意義なセミナーでありました.講師の先生方,ご参加の皆様に厚く御礼申し上げます.

(文責: 神経内科学分野 金澤 雅人)

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