私たちの研究室では、学習・記憶のメカニズムと、発達障害の病態のメカニズムの解明を目指しています。
これらの解明のために、様々な新しい技術を開発しています。
 

 
ヒトや動物は、様々なことを学習し、脳で記憶しています。このとき脳では何が起こっているのでしょうか?嫌いな勉強はなかなか覚えられず、覚えてもすぐに忘れてしまいがちです。一方で、好きな遊びの内容はすぐに覚えられ、ずっと覚えていられます。学習や記憶を可能にする脳の仕組み、記憶を長続きさせる仕組み、思い出す仕組み、忘れてしまう仕組みを、私たちは明らかにしたいと思っています。
 
また、最近は、発達障害に対する社会的関心が高まっています。発達障害の人とそうでない人との違いは、脳にあると考えられています。では、発達障害の人とそうでない人とで、脳の中の何が違うのでしょうか?発達障害の症状につながる脳の仕組みを、私たちは明らかにしたいと思っています。
 
しかしながら、これらの問題は「難問」です。なぜなら、ヒトや動物の脳は、様々な分子・細胞・回路がひしめきあう、体内で最も複雑なシステムだからです。この複雑なシステムの仕組みを理解するには、システム(脳)の中の特定の要素を抽出して解析する技術が必要です。
 
これまでに私たちは、生体脳内でのゲノム編集技術「SLENDR法」や「vSLENDR法」を開発し、脳での特定の内在性タンパク質の挙動を高精度にイメージングできるようにしました (Cell 2016, Neuron 2017)。これらの技術開発により、従来の方法では解決できなかった様々な脳神経科学の問題に挑めるようになりました。
  

 
この「SLENDR法」「vSLENDR法」に加えて、現在研究室では、生体脳内で特定の分子・細胞・回路を選択的に標識し、行動中の動物において特定の分子・細胞・回路の動態をイメージングし、操作する技術を開発しています。
  
本研究室で開発した技術に加えて、2光子イメージング、ウイルスや電気パルスによる遺伝子導入、光遺伝学、パッチクランプ電気生理、分子生物学などの最先端技術を駆使して、学習・記憶の「生理」と発達障害の「病態」を、分子・細胞・回路のマルチレベルで明らかにすることを目指しています。

主な参考論文 / Selected publications
 
Nishiyama J*, Mikuni T*†, Yasuda R†. Virus-mediated genome editing via homology-directed repair in mitotic and postmitotic cells in mammalian brain.
Neuron. 2017; 96(4):755-68.
    *Co-first authors, †Corresponding authors
      - Featured in Nat Rev Neurosci
 
Mikuni T*, Nishiyama J*, Sun Y, Kamasawa N, Yasuda R. High-throughput, high-resolution mapping of protein localization in mammalian brain by in vivo genome editing.
Cell. 2016; 165(7):1803-17.
      - Selected as “Best of Cell 2016” paper
      - Featured in Nat Rev Neurosci
 
Mikuni T, Uesaka N, Okuno H, Hirai H, Deisseroth K, Bito H, Kano M. Arc/Arg3.1 is a postsynaptic mediator of activity-dependent synapse elimination in the developing cerebellum.
Neuron. 2013; 78(6):1024-35.

主な共同研究先 / Collaboration
 
東京大学 (Univ. Tokyo)
京都大学 (Kyoto Univ.)
山梨大学 (Univ. Yamanashi)
鹿児島大学 (Kagoshima Univ.)
新潟大学学内 (Niigata Univ.)
理化学研究所 (RIKEN CBS)
Max Planck Florida Institute (USA)
HHMI Janelia (USA)
UC San Diego (USA)
北京大学 (Peking Univ., China)
     など

私たちへの研究資金サポートに対し、心から感謝します / Funding
 
文部科学省/日本学術振興会・科学研究費 (MEXT)
Human Frontier Science Program
科学技術振興機構 (JST)
日本医療研究開発機構 (AMED)
武田科学振興財団 (Takeda)
上原記念生命科学財団 (Uehara)
東レ科学振興会 (Toray)
ブレインサイエンス振興財団(Brain Science Foundation)