1. 脳由来神経栄養因子BDNFが脳内シナプス領域で局所的な蛋白合成を誘導することが判明しました。
2. 栄養因子BDNFは神経細胞において、アミノ酸やグルコースといった栄養素と協調して、mTORシグナル系を活性化することが明らかになりました。
3. mTORシグナル系の活性化は学習記憶に必要ですが、遺伝子変異による過度な活性化は、細胞の巨大化、形態異常を引き起こし、限局性皮質形成異常を発症させることが判明しました。
1. 中脳ドパミン神経細胞は、上皮成長因子受容体(ErbB1)やニューレグリン1受容体(ErbB4)を発現して、これらのサイトカインに反応することが判明しました。
2. 脳内の神経伝達物質とサイトカインは相互に密接に制御し合っていることが判明しました。例えば神経伝達物質であるドパミンは、神経細胞やグリア細胞膜上に結合して存在するサイトカイン(pro-EGF, pro-HB-EGF, proTGFα)を切断して、細胞外に放出させます。放出された因子(EGF他)は、周囲のグリア細胞や神経細胞上の受容体(Erb1-4)に結合して、細胞増殖や成長を促します。
3. サイトカインはカルチャー中で、ペリニューラルネット構造の形成を阻害することが判明しました。ペリニューラルネットワークとは脳内の神経細胞を取り囲むメッシュ上に広がる細胞外基質構造で、主なる成分はコンドロイチン硫酸とプロテオグリカンである。大脳皮質ではGABA神経細胞周囲にWFAレクチン結合性のものが存在し、また統合失調症に伴い消失すると言われている。
1. 新生児ラット・マウスに投与したサイトカイン10数種類のうち、インターロイキン1(IL-1)、上皮成長因子(EGF)、ニューレグリン1(NRG1)が、動物の認知行動に強いインパクトを与えました。この3つのサイトカインの受容体はドパミン神経とGABA神経細胞上に多く発現していることから、これらの神経細胞の生後発達が障害されたことが、動物の認知行動異常に結びついたと推察されます。
2. EGF投与で作製した統合失調症モデルラットは淡蒼球にドパミン神経の過剰支配が見受けられるとともに、その活動も上昇していました。
3. NRG投与で作製した統合失調症モデルマウスは前頭前野へのドパミン過剰支配とともに、MK801への感受性が亢進し、中脳ドパミン神経自発発火も亢進していました。