新潟大学脳研究所 基礎神経科学部門
分子神経生物学分野

 分子神経生物学分野は、昭和45年に脳研究所の第6番目の部門(神経薬理学部門)として開設された。昭和51年の新営工事完了により新しい研究所4階へ移転し、昭和59年には実験室の改造により、遺伝子操作の大部分を一室で行うことができるようになった。平成7年4月に脳研究所の改組に伴い、神経薬理学部門から分子神経生物学分野と改名された。

 初代高橋教授在任の15年間には、1)神経系における薬物中毒の研究、2)ミエリンの生化学的研究、3)細胞レベルでの神経薬理学的研究、4)中枢神経細胞における遺伝子発現機構の研究、5)松果体の研究、6)カテコ-ルアミン、コレシストキンなどの神経活性物質とその機能の研究、等の6テ-マの研究が行われた。中でも、コレシストキニン、ニュ-ロン特異性エノラ-ゼ、S-100、14-3-3等の脳機能遺伝子のクロ-ニングは世界で最初になされた著名な研究である。 

 平成元年3月、高橋教授が退官し、京都大学医学部より三品教授が就任した。当研究室で培われていた分子神経生物学を基盤に、生化学的、電気生理学的、かつ薬理学的手法を駆使することで中枢での興奮性神経伝達を担うグルタミン酸受容体の分子構造を世界に先駆けて発表した。グルタミン酸受容体の遺伝子をクロ-ニングした後、トランスジェニック動物・マウス胚操作の手法を駆使し、グルタミン酸受容体遺伝子欠損ミュ-タントマウスの作成にも成功した。このマウスの多岐に渡る解析から、グルタミン酸受容体が脳における記憶という作業に関与していることを実証した。

 平成6年9月より、米コ-ルドスプリングハ-バ-研究所より那波教授が赴任した。那波教授は神経ペプチドの遺伝子研究に携わっていた経歴の持ち主であるが、現在の専門は神経培養を中心とする神経細胞生物学である。現在10名を越える人員を抱え、本格的にサイトカインシグナルによる脳シナプス発達制御と破綻機構という神経生物学の命題に取り組んでいる。現在多くの国内・国際共同研究が行われ、神経栄養性因子とサイトカインに関するものはスイス(1)、アメリカ(2)、スウェ-デン(1),中国(1)と4カ国、5研究機関に及んでいる。また、新潟大学内でも脳シナプス発達機構の研究の一環としての精神疾患研究プロジェクトを医学部精神医学教室、生理学教室、県内関連病院および同研究所病理学分野と実施している。所属学会としては、日本神経科学会、日本生理学会、日本統合失調症学会、日本分子生物学会、日本生物学的精神医学会、北米神経科学会などがあげられる。


2016.4 荒木技官の退職記念会より