2015年04月22日

イベント

「見てみようヒトの脳と心」・「サイエンスキャンプ」を終えて

世界脳週間に企画された「脳週間2015 見てみようヒトの脳と心」と、科学技術振興機構(JST)主催の「スプリング・サイエンスキャンプ2015」が、平成27年3月24~26日に脳研究所において行われました。

「見てみようヒトの脳と心」(3/24)では、新潟県内の高校生40名とサイエンスキャンプに全国の高校から参集した8名が当日のプログラムに参加しました。前半は6つのグループに分かれ、脳研究所の各分野でおこなわれている研究内容についての講義をうけたほか、日頃は見ることのできない研究施設を見学し、使用している実験機器類や実験標本、本物の病理検体などに触れその解説を受けました。短い時間ではありましたが今おこなわれている脳研究の一端を体感してもらうことができたと思います。後半は、本研究所の五十嵐博中教授による「脳を見る」、笹岡俊邦教授による「ヒト脳の働きをマウス脳で理解する」という2つの講義をおこないました。参加者等は、現代の脳科学をわかりやすい言葉で聴くことで、教科書やネットなどでは得られない知識と感動を得ることができたと感想を述べていました。

「サイエンスキャンプ」(3/24~26)は、全国の高校生達が合宿形式で最先端の科学に触れるプログラムです。本研究所で開催するサイエンスキャンプは人気が高く、今回も全国の応募者から10倍近い倍率のなかを選抜された8名の高校生が様々な体験をしました。各分野で行われている研究手法を実際に体験することで、脳科学というものがいかに複雑で多岐にわたる研究領域を融合したエキサイティングな研究分野であるかを理解してもらえたと思います。実際に参加者の感想文からは、脳研究の大切さや奥深さを実感したこと、未知の体験を通して学びの概念が変わり自ら積極的に学ぶことの必要性に気がついたことなどが読みとれます。さらにほぼ全員の感想として、2泊3日の共同の生活と学びの中で、研究に対する情熱を持った仲間が全国にいることがわかった喜びもつづられていました。これらの経験と感動は、この先、進学、就職などの人生の転機を迎えた時に生きるものであると思っています。

サイエンスキャンプは、今回で終了することがJSTから連絡されています。このサイエンスキャンプは、これまで参加した高校生に多大な影響を与えてきており、実際、脳科学を目指して医学部や脳研究をおこなう大学院へ進学した例が多数あります。さらに多くの参加者が、その後サイエンスを目指す仲間として、進学や就職においてお互いに影響を与え合っていることを聞いています。その意味で、文科省がこれまでおこなってきた諸事業の中で最も成功した事業例だと思います。科学立国を目指すのであれば、その幹となる人材育成を図ることは最も大切で、受験第一の今の学校教育ではできなかったこのような教育プログラムを拡充していくことこそが、重要であると考えています。その意味で、本事業の中止は残念です。

世話人・﨑村建司(細胞神経生物学分野)

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