2015年08月06日

イベント

第5回新潟大学脳研究所共同研究拠点国際シンポジウムを終えて

 2015年3月5日〜6日にかけて第5回新潟大学脳研究所共同研究拠点国際シンポジウム"Genome Editing Technology; its Current State-of-Art and Application to Brain Research"を開催しました。遺伝子改変動物開発と幹細胞の研究分野の世界のリーダーであるRudolf Jaenisch教授(MIT/Whitehead Institute),Jacob Hanna博士(Weizmann Institute)を始め、本分野の最先端でご活躍の方々をお招きし、急速に発展するゲノム編集の最新の研究成果、並びに脳科学を含めた多様な分野の第一線の研究成果をご講演頂き、全国からの大勢の参加者による活発な討論と交流が行なわれました。
 丁度3月4日〜5日に開催された生理学研究所との合同シンポジウムに引き続き、5日の本シンポジウムの最初には、ゲノム編集の第一人者の山本卓先生(広島大)から最先端の研究成果をご講演いただき、次いで阿部学先生(新潟脳研)からC57BL/6マウス系統を用いた遺伝子改変動物作成とゲノム編集研究について、伊川正人先生(大阪大)からCRISPR/Cas法による大規模マウスゲノム編集と生殖生物学分野への応用について、真下知士先生(京都大)からCRISPR/Cas法による高効率な遺伝子ノックアウト/ノックインラットの作成方法についてご講演いただきました。さらに若手研究者による多くのポスター発表と討論が行なわれ、そして初日のKeynote LectureとしてJaenisch教授にiPS細胞を用いたパーキンソン病・レット症候群の病因解明の最先端研究をご講演いただきました。夕方の懇親会では、講演者と多数の参加者が交流を深めました。
 6日には山田泰広先生(京都大)から癌細胞がiPS細胞に初期化される機構の解明研究を、そしてKeynote LectureとしてJacob Hanna博士から初期化機構とiPS細胞の全能性に関する異種間キメラによる研究をご講演頂きました。
 遺伝子改変動物開発のセッションでは、田中謙二先生(慶応大)から、テトラサイクリン制御システムによる高効率な遺伝子発現とノックダウンマウスの開発と機能解析研究について、小林和人先生(福島医大)から、トランスジェニックラットの開発と大脳皮質-基底核神経回路機能の解明について、池中一裕先生(生理研)からオリゴデンドロサイトがミエリンを形成する神経軸索の選択機構についてご講演頂きました。
 ヒト疾患研究のセッションでは、Keynote Lectureとして岡野栄之先生(慶応大)からマーモセットを用いた遺伝子改変動物作成によるヒト神経変性疾患の研究と日本のBrain Mapping Projects についてお話いただきました。堀田秋津先生(京都大)から、iPS細胞を用いた精密なゲノム編集の成果とデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療への展望について、オートファジー研究の世界の第一人者の小松雅明先生(新潟大)は、オートファジー欠損による凝集体と異常オルガネラ形成のしくみをご発表いただきました。
 引き続き岩室温泉で交流会を開催し、若い研究者がJaenisch教授、Hanna博士を囲む機会をもつことができました。特に、Jaenisch教授は夜半までおつきあい下さり、ご自身が研究を始められた頃からこれまでのキャリアについてなど、とても貴重なお話を伺いました。
 生物のゲノムの編集の研究と幹細胞研究の進展は、生物のからだのつくりと働きを理解し、さらにヒト疾患の病態解明と新たな治療研究ヘと繋がる次世代のバイオテクノロジー技術であり、本研究分野の発展も脳科学を進める原動力となることを確信致します。
 また、この場をお借りし、本シンポジウムの開催に尽力下さった関係の皆様に深く感謝いたします。
(文責 細胞神経生物学分野 﨑村教授,動物資源開発研究分野 笹岡教授)

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