超域学術院
脳病態解析分野

准教授
松井 秀彰 MATSUI Hideaki

ヒトの脳の中には千億とも言われる神経細胞とそれ以上のグリア細胞が存在し、その機能を司っています。神経細胞を星に例えると、さながら脳は小宇宙とも言えますが、さらに複雑なことに神経細胞は多数の突起をのばして各々にシグナルを伝達しあっています。ある意味では宇宙よりも複雑かもしれません。

宇宙の星の一つ一つを全て研究することは技術的にも理論的にも時間的にも不可能です。しかし身近な太陽や太陽系の惑星を研究することで、他の恒星や惑星の性質を類推することは可能です。同じように脳の神経細胞およびその連絡を一つ一つ明らかにすることも同様に不可能ですが、ミニチュア版の脳が存在すればそこから類推し正しい結論を導きだすことは可能です。

私達は小型魚類の中枢神経を研究することで、ヒトの脳内で起きている現象を明らかにします。特に脳・神経機能の異常によっておこる疾患や障害の原因を明らかにし、その治療や理解に結びつけます。我々人類は魚類を経て進化しており、ほとんどの脳・神経の構造や機能は既に魚の段階から存在します。魚で脳・神経の働きおよび病態を解明し、得られた知見を脳研究所に蓄積されたヒト試料と照らし合わせることで、これまで難しかったヒト神経精神疾患の治療や理解につなげていきます。

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小型魚類の脳神経系。マゼンダはTH陽性のドパミン及びノルアドレナリン神経。

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アフリカメダカは加齢及びαシヌクレイン依存性にパーキンソン病様の表現型を呈する。

助教
杉江 淳 SUGIE Atsushi

脳の神経回路は、通常は生涯に渡ってその機能を維持し続けます。そのためターンオーバーによって健常な組織を維持する他の体細胞と異なり、回路を形成している神経細胞は独自の細胞間相互作用によって長期的に健康状態を保つメカニズムを有していると考えられます。これが破綻すると老化または神経変性疾患や精神疾患へと繋がることが予想されます。しかし、神経細胞を維持するために機能する細胞間コミュニケーション機構は調査に要する期間が非常に長く、十分解明されていません。私達は個体の生活環サイクルが短く重複遺伝子が少ないショウジョウバエのメリットを活かし、複雑な遺伝子解析を迅速に推進しこの問題に取り組んでいます。そして、神経細胞間で情報伝達の場となるシナプスや(図1)、隣接細胞間を隔てる細胞膜を構成するリン脂質の代謝に焦点を当てた細胞間相互作用解明に向けた研究を進めております(図2)。これらの研究から、シナプスや脂質代謝の適切な調節による新規神経保護の分子基盤の知見の提案し、従来説明がつかなかった神経変性疾患や精神疾患の脳回路で起こる障害の実体解明につなげることを目指します。

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ショウジョウバエ視神経軸索にあるシナプス
(A)シナプスの分布と数の半自動定量。シナプスの位置情報、スポットとして判定されるシナプスのシグナル強度、そしてバックグラウンドとなる細胞質のシグナル強度の模式図。(B)ショウジョウバエ視神経軸索終末(青色)とシナプスマーカー(白色)。(C)画像解析ソフトウェアIMARISの自動選択によるシナプスのスポット化。(図1)

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脂質代謝異常による神経形成異常
(A)ショウジョウバエ成虫脳とキノコ体(点線部)。(B)野生型キノコ体の1細胞。(C)脂質代謝に必要なDIP2の変異体では過剰な軸索枝が観察された。各図の矢印は軸索枝を示す。(図2)

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